野生動物を「大絶滅」から救う初の世界地図
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月14日 19時0分
<絶滅の危険がある「ホットスポット」と動物の避難所になる「クールスポット」を色分けできれば、戦略的に保護活動を進めることができる>
野生動物を死に追いやる最大の要因は、世界中どこでも狩猟と密猟、それに農地開拓や道路建設などによる生息地の喪失だ。多くの種類の生き物が一度に絶滅する「大絶滅」の危機を招いているのが、この2大要因であることは疑う余地がない。
しかし、同じ動物でも生息地ごとにどの程度絶滅の危険にさらされているかは、これまでほとんど知られてこなかった。そのために、エリアごとに的を絞った保護活動はなかなかできずにきた。
我々は学術誌「Plos Biology」に発表したばかりの論文で、狩猟や伐採など最も深刻な15項目の人為的脅威が、絶滅のおそれがある世界中の5457種の哺乳類、鳥類、両生類の生息地に、実際どのくらいの危険をもたらしているかを調べた。
その結果、5457種のざっと4分の1に当たる1237種は生息域全体の90%超が絶滅の脅威にさらされていることが分かった。そのなかにはライオン、ゾウなど多くの大型哺乳類も含まれる。最も懸念されるのは、生息域の全域が深刻な脅威にさらされている動物が395種にも上ることだ。
予測不可能な脅威も
次に我々は、個々の動物種の生息域ごとに、その動物の生存を脅かす要因をマッピングした。例えば、アフリカのライオンは都市化と狩猟と密猟に脅かされているため、ライオンの生息域の中ではそれらの脅威の強弱を示した。
すると、特定の動物の生息域のうち、深刻な脅威があるエリアと、人為的な脅威が少なく、動物たちの避難所になり得るエリアが浮かび上がった。
そこで、動物が人為的な脅威にさらされている「ホットスポット」と、おおむね脅威がない「クールスポット」を世界地図上で色分けした。
多くの野生動物が生息域のほぼ全域で脅威にさらされているという事実は、重大な懸念材料だ。これらの動物はどんどん数が減り、人間が侵入したエリアから完全に姿を消すだろう。逃げ場がなければ絶滅は時間の問題であり、重点地域に的を絞った保護活動が急務だ。
一方、人為的な脅威にまったくさらされていない1000種超の動物も確認できた。これは明るいニュースだが、単純には喜べない。たとえば両生類の主要な脅威である感染症の影響は考慮に入れていないし、すべての動物に影響を及ぼす気候変動も同様だ。
10年でトラが倍増した例も
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