米中5G戦争ファーウェイの逆襲 米政府提訴「成功する可能性ある」
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月19日 6時50分
さらにファーウェイは3月上旬、米政府機関からファーウェイ製品を締め出す法律は、議会が司法の役割を兼ねている点で三権分立に反しており、憲法違反だとして米政府を提訴した。
トランプが抱える2つの懸念
この訴訟は単なる法廷闘争を超えた意味を持つ。5Gはデジタル情報処理のスピードや流れを革命的に進化させる技術革新だ。今回の提訴は5G市場をめぐる熾烈な競争において、中国がアメリカに対するリードを守り切るために仕掛けた新たな攻撃でもある。
5Gネットワークの構築・販売を制する者が情報の流れを支配し、ひいては情報を盗んだり改ざんしたりもできると、米当局者は言う。ファーウェイは提訴によって、同社のスパイ加担疑惑が事実であると証明するようトランプ政権に迫ったわけだ。
各国が5G製品の供給元の選定を進めるなか、米中の対立は激しさを増している。中国にとっては広域経済圏構想「一帯一路」を補完する存在として習近平(シー・チンピン)国家主席が提唱する「デジタル・シルクロード」を実現する絶好の機会だ。
一方、トランプ政権にとって5Gは国家安全保障と経済支配の両面で大きな意味を持つ。「トランプはこの経済問題を克服することが重要だと考えている。経済のバランスを正して中国に他国同様にルールを守らせるためだけでない。将来の政治的、軍事的パワーの不均衡を防ぐためにも、彼の頭の中では、2つは密接に関係している」と、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は1月にワシントン・ポスト紙に語った。
この2つの懸念が根底にあるからこそ、トランプ政権は他国にファーウェイの排除を要請したり、中国に貿易戦争を仕掛けたりしてきた。
昨年12月、カナダはアメリカの要請に応じ、対イラン制裁に違反して製品をイランに輸出した疑いで、ファーウェイの創業者兼CEOの任正非(レン・チョンフェイ)の娘で副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)を逮捕、アメリカへの身柄引き渡しに向かっている。さらに米司法省は、米通信大手のTモバイルからロボット技術を盗んだとして同社を起訴している。
3月に入るとドイツが5G移動通信網の整備の入札でファーウェイを排除しない方針を打ち出した。するとトランプ政権はファーウェイ製品を採用すれば、米情報機関の機密情報などの共有を制限するとドイツに警告した。
それでも、5Gの支配権争いで中国はいまだにアメリカより先行していると、オバマ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジェームズ・ジョーンズは指摘する。
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