グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月25日 13時0分
ところが、若者までが熱い視線を送っていたこの「グーグルAI中国センター」は、あっという間に揺らぎ始めたのである。
なんと、1年も経たない2018年9月11日に、李飛飛はグーグルを離職してしまったのだ。スタンフォード大学における教育研究に専念することになったという。
李飛飛の後継にはグーグル・クラウドのAI研究開発部門を主管する李佳(Jia Li、リー・ジャー)という女性が就いたが、李佳もまた2カ月後の2018年11月にグーグルを去ってしまった。
揺らぐグーグル
目まぐるしい人事異動は、グーグルの中心が揺れ動いていると、人々の目には映った。
それは中国の市場に再参入するのか否かというビジネス展開の場においても「揺らぎ」を招いている。
たとえば、2018年12月11日、グーグルの現在のサンダー・ピチャイCEOは米下院司法委員会で、「現時点では中国における検索事業に乗り出す計画はない」と証言した。というのも、同年8月、グーグルが中国向けの「ドラゴンフライ」と呼ばれる検索エンジンの開発を進めているという報道が、国内外で広く報道されていたからだ。
それに対してアメリカのペンス副大統領は、同年10月4日にハドソン研究所で演説し、「ドラゴンフライの開発を即座にやめるべきだ」と、グーグルの対中接近路線を批難している。それもあって、ピチャイは中国市場に再参入するつもりはないと証言したのだろうが、それならなぜ冒頭に書いたようなグーグルに対する警告が、今年3月になって発せられたのだろうか。
AIの軍事利用とグーグルの「AI原則」
実はグーグルがかつて米・国防総省と結んだ計画 "Project Maven" には、画像や動画分析のためのAIアルゴリズム開発が含まれている。戦場における画像や動画をAIに学習させて、攻撃するターゲットの正確度や状況判断の迅速性などを高める効果をもたらす。
これを実現するために、Project Mavenはドローンが撮影した膨大な画像や動画を学習データとしてアルゴリズムを構築することを基軸としている。
どこからどう見ても、「AIの軍事利用」だ。
そこで2018年6月、グーグルは契約を更新する2019年初頭を目途に、Project Mavenから抜けると宣言した。
なぜなら3000人ほどの従業員が「AIを軍事利用するプログラムへの参加」に反対する署名運動をして、次々と重要な人材がグーグルから去っていったからだ。
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