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グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月25日 13時0分

グーグルには「邪悪になるな(Don't Be Evil)」という理念がある。だからこそ、多くの優秀な技術者や研究者を集めることができた。

「グーグルの女神」と称せられた李飛飛が突如グーグルを去った背景にも、こういった事情があったのだろう。

もう一度、前述の李飛飛のスピーチに目をやってほしい。テーマは「AIの民主化」で、その中には「アルゴリズムの民主化」がある。これはProject Mavenを示唆してのことだったにちがいない。だから彼女は「AIの武器利用」の可能性のあるグーグルを去ったのだろう。そして中国の「次世代AI発展計画」の中にある「AIの軍民利用」をも警戒して、「グーグルAI中国センター」を去り、スタンフォード大学に戻る道を選んだと解釈される。

グーグルのピチャイCEOは2018年6月に「AIを武器利用に使用しない」という、グーグルの「AI原則」を発表した。

そして、その「AI原則」を盾にして、約束通り、2019年3月にProject Mavenの契約が切れるのを待って、米・国防総省から離れることになった。

だからこそ、この時期に、冒頭で書いた米上院の軍事委員会公聴会でのグーグル批判が飛び出す結果を招いたものと思われる。



中国のメディアは、それに先んじた1月14日に「グーグル(谷歌)によってAIプロジェクトの梯子を外され怒り狂った米国防部が、シリコンバレーでAI人材を探し回っている」というタイトルで、すでに米当局の動きを予見する報道を大きく拡散させている。

彷徨うグーグルの理念「邪悪になるな」

一方、グーグルは、こっそりとAIの軍事利用計画のために大量のクラウドワーカーを雇用していたことが、今年2月5日に明らかになった。The Interceptが、「グーグルはギグ・エコノミー・ワーカーを、異論のあるProject Mavenのために雇用していた」で明らかにした(この報道のタイトルは、筆者が最初にアクセスしてからだけでも、3回にわたって修正されているため、アクセスした時点でのタイトルは、又もや微妙に異なっているかもしれない)。 

「ギグ・エコノミー」とは、ネットを通して単発の仕事を受注する働き方で、「ギグ・ワーカー」は1時間あたり1ドル(時間給110円!)にも満たない低賃金の頭脳労働者として使い捨てにされている。このようなことをしている時点で、既にかなり「邪悪」ではないのか。

2006年から2010年にかけて、グーグルは中国市場に本格参入していたが、中国政府の検閲に従うことを嫌い、「邪悪になるな」という魂を重んじて、中国市場を去った。

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