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マクロン大統領も対中ダブルスタンダード

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月1日 13時0分



ほぼ同時進行で、中国の中央テレビ局CCTVは「米ボーイングの737MAXに関して、中国の航空管理当局が飛行に必要な耐空証明(技術的に安全に飛行できるという証明書)の申請を受け付けるのを一時停止した」というニュース速報を流した。その情報はネットにも溢れて、「エアバス300機購入」と「ボーイング航空機飛行停止」の文字が交差する形でシンボリックな対照を成していた。

アメリカの飛行機があまりに頻繁に墜落事故を起こすため、使用禁止になると同時に、EUのエアバスを大量購入する。これほど米中と欧中との関係を鮮明に映し出した現象も珍しいと言わねばなるまい。

ボーイングとエアバスは最大市場中国で激しく競争しており、2017年11月のトランプ大統領訪中時には習近平国家主席は28兆円に上る巨額商談とボーイングから300機の航空機を購入する大盤振る舞いをしたものだ。しかしこの度の「エアバス300機購入」と 「ボーイング航空機飛行停止」は、まさに中国がアメリカより欧州を選んだ瞬間であったことを印象付けた。

まるでそれを象徴するかのように、26日にパリで開催されたEU首脳会談は、次世代移動通信システム規格5Gに関して、「EUが一律に一つの特定の企業(=Huawei)の製品を排除することはせず、その選択はEU加盟国が各自決定する」と結論付けた。

安倍首相は3月25日の参院予算委員会で、「一帯一路の第三国での協力」に関し、対象国への適正融資など4条件を満たすことが条件であり、「全面的に賛成ではない」と今ごろになって国内向けには言っているが、昨年10月26日に習近平国家主席に対しては「(一帯一路への)協力を強化します」と述べて習近平を喜ばせている。だからこそ、全人代期間における「日本モデル推奨」発言があったわけだ。ダブルスタンダードと言わねばなるまい。

もっともダブルスタンダードは日本のお家芸というわけでもなく、あの若きマクロン大統領もうまく使い分けているようだ。

3月27日、EU加盟国であるルクセンブルクもまた「一帯一路」に関する協力の覚書に調印した。

本日、新元号が発表されるが、平成時代の1992年に天皇訪中が中国の爆発的な経済発展に貢献した役割以上に、安倍首相のインド太平洋戦略から「一帯一路」協力表明への切り替えは、中国の更なる発展の後押しをする役割を果たしていることに気が付いてほしいものである。(なお、1992年の外交敗北に関しては今年1月24日付のコラム<日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない>、特にそこに貼り付けてあるグラフの赤線をご参照いただきたい。)

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。日本文藝家協会会員。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中文・英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)


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