ジョブズとクック、まったく異なる仕事の流儀
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月2日 19時40分
どっちのCEOがすごいのか?
ジョブズは周りの意見を聞かず、自分の道を進む「唯我独尊」の経営者だった。自分の気に入らないことは無視するCEOでもあった。
一方のクックは周りの意見を聞き、最善解を引き出す経営者だ。自分の気に入らないことでも、向き合って解答を見つけようとするCEOだ。
ジョブズが「衝突」を恐れない経営者とすれば、クックは「調和」を重んじる経営者と言える。
どちらが優れているかどうかという議論は、的外れだ。その時の社会と時流によって答えは変わるからだ。
もしジョブズが健在で、現在もアップルCEOならば、人種差別主義者と言われるトランプ大統領には喧嘩を売り、独裁者の習近平(シー・チンピン)国家主席を罵倒しただろう。その結果、iPhone販売は減少し、アップルの業績が悪化した可能性は高い。
地球環境問題に後ろ向きなジョブズに対して環境団体は非難を連発しただろうし、サプライヤーの人権問題を放置したとして人権団体はジョブズ糾弾を繰り広げただろう。
クックはイノベーションを生むことはジョブズより上手くないかもしれないが、今の時代と社会の流れを考えれば、クックの方が時代には合っている。忘れてならないのは、いかなる経営者も時代の流れに逆らって栄光を手にすることは出来ないことだ。
[筆者]
竹内一正(経営コンサルタント)
ビジネスコンサルティング事務所「オフィス・ケイ」代表。著書に『スティーブ・ジョブズ 神の交渉力』(経済界)、『イーロン・マスク 世界をつくり変える男』(ダイヤモンド社)ほか多数。最新刊『アップル さらなる成長と死角』(ダイヤモンド社)が2019年3月に発売。
竹内一正(経営コンサルタント)
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