元号は天皇が決めるべきだ
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月5日 18時0分
赤穂浪士が討ち入りした元禄15年、当時の江戸の庶民で東山天皇と結びつけた人はいなかっただろう。今日でも将軍綱吉は思い出せても当時の天皇が誰だったかを言い当てられる人はまずいない。しかし、明治15年の日本人はいまの天皇が即位してから15年目の年であることは、簡単に想起した。
明治時代に、悠久の日本の歴史文化は取捨選択され、修正されて、時には、西洋の風習をもとりいれた日本の「伝統」が生み出された。一世一元の元号もその一つである。
終戦後旧皇室典範の廃止で元号の法的根拠はなくなり、1979年に元号法で復活した。そのとき、明治と同じ一世一元とされた。現実的に、100年たって、一世一元に国民は慣れていたし、第一、昔のように不定期にコロコロと変わられては、現代生活では使用できない。元号という伝統を守るためにも明治の修正のままにするのはいたしかたなかろう。だが、同時に閣議決定すると決められたのはちょっとおかしい。
そもそも、元号は天皇が決めるものだった。江戸時代に、幕府が最終的に裁可するようになり、変更させた例もあるが、あくまでも基本は天皇(時には上皇の意見のときもあったが)が、幕府は追認するというのが原則であった。伝統を重んじるならば天皇が決めるべきである。
報道によれば、決定後、宮内庁を通じて今上陛下も践祚をひかえた皇太子殿下に知らされ、承諾されたという。だが、立憲制度を守る陛下も殿下も否定することは絶対ないのである。また政令も御名御璽があって初めて有効になるが、これも同じ理由で陛下が拒否することはありえない。選択の自由がないのだから陛下・殿下が選んだとはいえない。
天皇に選択の自由を
天皇が裁定しなくなったのには、別の側面もある。一世一元は、統治者が時間を支配するという意味があり、それを天皇が決めるということは天皇が統治者であると宣言することであった。だから、現在の日本国憲法下で、国民主権となったので統治者たるは国民が決める。だが、それならば、決めるのは内閣ではなく国会であろう。国会議員は国民の代表であり、国会が国権の最高機関であるということは憲法に明記してある。内閣は統治行政機関にすぎない。
私は、国会が超党派の特別委員会をつくって候補を絞って、天皇が最終的に決定するというのがいいのではないかと思う。いまや天皇は国民総意にもとづく日本国と日本国民統合の象徴である。元号制定を利用して天皇を戦前のような存在に担ぎ上げようとする者があれば憲法違反として厳しく取り締まればいい。
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