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花粉症、温暖化、放射性廃棄物の処分──「昭和」からのツケを引き継ぐ「令和」

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月12日 11時15分

拡散した放射性物質によって汚染したため、除去されて中間貯蔵施設に集積されている土などは今後どうなるか。さらに第1原発の格納容器の底に塊となっている「燃料デブリ」はどう処理されていくか、いずれも先が見えていない。



燃料デブリは1、2、3号機の原子炉下部に、核燃料が溶けて燃料棒から落下し、圧力容器や格納容器の床を溶かして高い放射線を出し続けている。人も近づけないためにロボットでデブリの状態を探っており、どのように取り出すかは探査次第である。高いレベルの放射性廃棄物を含むだけに、取り出した後にどこに廃棄するのか決まっていない。東京電力は、福島原発の「廃炉には30年も40年もかかる」という。

政府がこれまで掲げてきた核燃料サイクル政策では、原発で発生した使用済み核燃料は各原発サイト内のプールに一定期間置かれ、冷却された後に、青森県六ケ所村の再処理工場で再処理されることになっていた。ここで生じる高レベル放射性廃棄物はガラスで固められ、地下300メートル以上の深さの地下に埋設、万年単位で放射線が減衰すると推定しながら長期管理する方法だが、その最終処分地をどこにするか選定できていない。

大きな意味で言えば、昭和、平成時代のエネルギー消費のツケを先の世に押し付けることになる。花粉症、地球温暖化、放射性廃棄物とも「昭和」時代の政策が生んだもので、人の健康被害、生態系・環境の破壊を引き起こしたことが、人間の寿命を超える自然界の時間によって明らかになった。「昭和」は遠くならず、解決にはさらに明治にさかのぼる近代150年を振り返ることも必要となる。

[執筆者]
佐藤年緒(さとう・としお)
環境・科学ジャーナリスト
時事通信編集委員、科学技術振興機構(JST)の科学教育誌『Science Window』編集長などを歴任。環境、水、災害、科学コミュニケーションなどをカバーする。日本科学技術ジャーナリスト会議会長。著書は『つながるいのち-生物多様性からのメッセージ』、『科学を伝える-失敗に学ぶ科学ジャーナリズム』(いずれも共著)など。

※当記事は時事ドットコムからの転載記事です。




佐藤年緒(環境・科学ジャーナリスト)※時事ドットコムより転載


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