「移民は敵ではない、ブラック労働に苦しむ日本人が手を繋ぐべき相手だ」
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月18日 13時30分
先ほどの「移民」という言葉を使うか使わないかにも大きく関係することだが、つまりは、特別でもあり、ただ同時に同じでもあるということ。その特別さというのはそれぞれが違うものを持っているということであって、それをお互いに認識し合った上で、大事なのは手を繋ぐということではないか。少なくとも、そこにくさびを打たせないことがすごく重要だと思っている。
世の中には、外国人が増えると治安が悪化する、と報道するメディアもある。SNSでのつぶやきも含めて時に嘘が入っている情報もたくさんあって、実際にいっぱい読まれているし、本屋にもたくさん売っていて、そういう情報に接している人は多いと思う。
そのときに、ちょっと違うのかなと思ってもらえるといいなと思う。間違った情報も流れているなかで、この本にはできるだけファクトというかデータを多く載せて、ただの物語でしょうと思われないように書いたつもりだ。
――望月さんは、どうしてそういう想像力を働かせることができるのか。そもそも、なぜ移民の問題に取り組もうと思ったのか。東京大学大学院でミシェル・フーコーの自由主義論を研究し、経済産業省からグーグルなどを経て、たどり着いたのが日本の「移民」事情を発信するウェブマガジンの編集長。きっかけとして何か、自分の「移民性」のようなものを感じるなどの原体験があったのか。
「あった」って言えれば、格好いいんですけどね。「かつて......」、みたいな。あんまりないんですよね、僕それ。本当にない。実際のところ、いつもそこの語りを求められることに難しさを感じている。......いや、ないです。
――移民をめぐる問題について取材を始めてみたら、興味を持ったということ? 単純に、もっと知りたくなったとか。
うーん、なんですかね。うーーーん(悩む)。
先ほど話した「移民って、全員こうだよね」というステレオタイプみたいなものって、端的に言って間違っているじゃないですか。正しい情報ではないというか。「正しく」、というと語弊があるのだが、僕は「ちゃんと分かりたい」というのは常にある。
ちゃんと理解したい、という気持ちが何事に対してもあって、ちゃんと理解しようと思ったときに、例えば勉強しようと思うときって、それこそ統計や制度を勉強するとか客観的なデータや情報を見ていくというイメージだと思うのだが、僕の中ではそれだけではない。
それぞれの人が、そのときこういう風に思って、だからこうなっているのかなとか、あのときこういう考えに陥ったからこうなっちゃったのかなとか、そういう主観性みたいなものも、究極的には知り得ないのだが、「ちゃんと分かる」ということの一部としてあると思っている。
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