「移民は敵ではない、ブラック労働に苦しむ日本人が手を繋ぐべき相手だ」
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月18日 13時30分
技能実習に限らず、外国人を労働者として新規に受け入れることについては、縮小したりやめるという選択肢はある。逆に言うと、受け入れたなら受け入れたなりのことをしなければならないという話だ。自分で受け入れておいて、受け入れるという選択をしておきながら、労働市場に入ってきたら競争が起きて嫌だというのは、何を言っているんだとなる。じゃあそもそも受け入れるなよ、という話だ。
労働市場の中で競争が起きているというのは別に外国人と日本人の間だけで起きているわけではなくて、国籍に関係なく人間と人間の間で起きている。例えば、2人の日本人が一緒に大学を卒業して、友達は行きたい企業に行けて自分は行けなかった、ということもあるだろう。でもだからといって、(日本人の競争相手)全員を排斥していけるわけがない。「外国人」とか「移民」というラベルが、目を曇らせている部分もあると思う。
「あとがき」にも書いたのだが、そもそも自分の中には「移民」という言葉を使うことに対するアンビバレントな気持ちというのがある。
このテーマは日本の中で過小評価されているので、しっかり知ってほしい、考えてほしいという思いもあるけれど、同時に「移民」という言葉や「外国人」というラベルみたいなものが独り歩きすると、本当はひとりひとり300万人近くの人がいるのに、「外国人」がいるんでしょ、「移民」がこうなんでしょ、という風に語られてしまうリスクもある。それは怖いなと思っている。
「移民」や「外国人」に自分の仕事が奪われるという、いろいろなものを省略しすぎている考え方にはできるだけ反論できるように、ひとつひとつの事例を伝えるルポみたいな作業もすごく重要だと思っている。だって、ひとりの「ナカシマ・ドゥラン」さん(編集部注:ニューズウィーク日本版2018年12月11日号「移民の歌」特集の望月さん執筆のルポルタージュで取材した在日28年の日系ペルー人)が目の前にいたら、この人に仕事を奪われる、とは思わないはず。
無名性の塊として「移民」や「外国人」と見るから、なんだかうーんと思うのであって。だからこそ、ひとりひとりに対する想像力を高めることで何とか出来ないかと思っている。それを高められるように、がんばりたい。
――想像力についてだが、望月さんは著書の中で、移民をめぐる問題は「彼ら」の問題ではなく、「私たち」の問題であると語っている。現代は「国家や企業が一人ひとりの人間たちから撤退する」時代であり、「社会的な支えを与える責任から国家が自らを解放しようとしている」。そしてここで言う「一人ひとりの人間」とは、外国人だけでなく「この国に生きるすべての人々」のことだ、と。
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