中国が世界54カ国にAI監視技術を輸出
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月24日 17時57分
だがこうしたシステムによる分析は、データが偏っていることが多く、アフリカ系アメリカ人は他のグループより犯罪に手を染めやすいという誤った判断を下すなど、不公平な結果につながりかねない。
100万人を恣意的に拘禁
独裁政権の国では、AIシステムによる国内の統制と監視の直接的な支援が可能になる。国内治安当局が大量の情報処理をする際も強い味方だ。処理すべき情報に含まれるのは、ソーシャルメディアの投稿やテキストメッセージ、eメール、電話など。警察はこうしたシステムから明らかになった情報に基づいて、社会の動向と政権を脅かす可能性がある特定の人々を割り出すことができる。
たとえば、中国政府は、国内の少数民族居住地域での大規模な取り締まりにAIを使用している。新疆ウイグル自治区とチベット自治区に対する監視システムは、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する全体主義社会の市民に対する常時監視システムを思わせるところから「オーウェル式」と呼ばれている。
こうしたシステムには必ずDNAサンプル、Wi-Fiネットワークの監視および広範な顔認識カメラが含まれ、すべて統合データ分析プラットフォームに接続されている。米国務省によると、これらの制度を利用して中国当局は、100万人から200万人を「恣意的に拘禁」している。
世界54カ国に中国のAI監視技術が
私の調査対象は、タイ、トルコ、バングラデシュ、ケニアなど閉鎖的な独裁政権から欠陥のある民主主義政権まで、世界90カ国に及んでいる。この研究の過程でわかったのは、研究対象のうち54カ国に中国企業がAI監視技術を輸出していることだ。
多くの場合、このテクノロジーは、中国が最も力を注いでいる経済外交圏構想「一帯一路」の一部に組み込まれている。中国はこの構想のもとで道路や鉄道、エネルギーパイプライン、電気通信などの広範なネッワークに資金を提供。最終的に世界のGDPの40%を生み出し、世界の総人口の60%がこの経済圏で暮らすことを目標としている。
たとえば、中国通信機器大手ファーウェイやZTE社などの中国企業は、パキスタン、フィリピン、ケニアで、監視技術を組み込んだ「スマートシティ」を構築している。
フィリピンの先進商業地区ボニファシオ・グローバルシティでは、「犯罪の発見と交通管理のためのデータ分析機能を備えた24時間365日稼働するAIによる監視」を可能にするために、ファーウェイの高解像度インターネット接続カメラが設置された。
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