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夢破れて31歳で日本を出た男が、中国でカリスマ教師になった:笈川幸司【世界が尊敬する日本人】

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月25日 16時50分

「教え方に独特なところがあり、また、学習者に寄り添って授業を作っているのが分かる。学生が100人いても全員の名前を覚えて呼ぶという姿勢で授業を進めているのは素晴らしい。教科書を教えるのではなく教科書で教えるべきだ――これは以前から言われているが、まだ浸透していない。日本語教育はそうあるべきで、私も共感している」

「7%くらいの学生は思い通りに上達していない」

忘れてならないのは、笈川の元漫才師という経歴だ。彼自身、「私がスピーチ指導をするときは、芸人のネタ見せのような状況を作っている」と言う(ネタ見せとは、芸人が大勢の人の前で自分のネタを披露するオーディションのこと)。

教え子の張も、そんな笈川から、人前でどうやって話せばいいかについて的確なアドバイスをもらった。嶋田も昨年、笈川に声を掛けて小規模な講演をしてもらい、彼の話のうまさ、人の心をつかむ話術に感心したという。



かつて漫才師になる夢に破れた男は、今どんな夢を持っているのか。2013年に独立し、現在は浙江省寧波に住む笈川は、中国各地から集まる日本語学習者向けに、自社で10日間の特訓コースを提供している。それ以外にも、中国の10大学で客員教授として集中講義を受け持ち、講演会や授業のため中国内外を飛び回る。

「本当は、日本語教育機関のある国全てを回りたいという夢がある」。でも、今の望みはそれではない。一介の日本語教師という枠を超え、異国で日本語を教え続ける姿は、はたから見れば順調かもしれないが、むしろ毎日のように行き詰まっているという。

「特訓コースで200人を相手にする対話授業をやっているが、終了後にアンケートを取ると、毎回7%くらいの学生は私の思い通りに上達していない。今のやり方で、全員を上手にできていない......。どうすればいいのかと悩んでいる」

挫折を知る熱血教師は、謙虚さを忘れていない。そして今日もまた、伸び悩む目の前の学生のために心を砕き続けている。

Koji Oikawa
笈川幸司
●日本語教師

※この記事は「世界が尊敬する日本人100人」特集掲載の記事「笈川幸司:夢破れた男が中国で熱血教師に」の拡大版です。詳しくは本誌をご覧ください。

「世界が尊敬する日本人100人:2019」より
●羽生結弦が「最も偉大な男子フィギュア選手」である理由
●遠藤謙、義足開発で起業し、目下の目標は「東京パラ金メダル」
●中国人が蒼井そらを愛しているのはセクシー女優だから──だけではない

※過去の「世界が尊敬する日本人」特集で取り上げた人の一部は、本ウェブサイトのニューストピックス「世界が尊敬する日本人」に掲載しています。



森田優介(本誌記者)


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