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スリランカ連続自爆テロで蘇ったイスラム国の悪夢

ニューズウィーク日本版 / 2019年4月26日 18時20分

2000年の米ミサイル駆逐艦コール襲撃(イエメン)、2001年のアメリカ同時多発テロ、2002年のバリ島爆弾テロ、2003年のイスタンブール自爆テロ、2004年のマドリッド列車爆破テロ、2005年のロンドンの同時爆破テロ――これらのテロ攻撃と同様、今回も複数のテロ実行犯が連携して犯行に及んでいる。米同時多発テロを除けば、いずれのテロにも簡易な手製爆弾(IED)が使用された。

スリランカのテロは、その手口の巧妙さと犠牲者の多さで、米同時多発テロを除くどの爆発テロも凌駕しているが、NTJはこれまで宗教ヘイトによる仏像や仏教寺院の破壊行動でしか知られていなかった。

過去10年間、アルカイダは紛争地帯以外での大規模なテロ活動は実行できなかった。次第に「レピュテーション・マネジメント(評判向上のための戦略的取り組み)」を意識するようになり、無差別殺戮は避けてきた。その一方で、世界中で傘下組織のネットワークを拡大している。

ISの出現は、テロ攻撃の実行までの準備期間やその規模に関して変革をもたらした。過去のテロはほとんどが紛争地帯(シリア、リビア、イエメン、アフガニスタン、パキスタン、フィリピン南部)で実行された。

もちろん幾つかの大規模なテロは戦場から離れた場所でも起きている。2014年には少なくとも4件、2015年には16件、2017年には18件、2018年には10件発生した。だが、これらのテロの大多数は組織が関与しない単独型の実行犯が起こしている。

ではなぜ、紛争地帯以外ではアルカイダだけでなく最盛期のISでさえ、単独型のテロ攻撃に軸足を移したのか?

おそらくその理由は、準備不足とか試験的に実行したとかではない。もっと大規模で影響の大きいテロ攻撃は、情報機関によって事前に探知されて阻止されているからだ。インドネシアやマレーシアなど安定した民主社会は特にこうしたケースだ。

スリランカはソフトターゲット

もう1つの大きな疑問は、なぜスリランカで過去最大規模の犠牲者が出たテロ攻撃が可能だったのか、という点だ。

それはスリランカが「ソフトターゲット(テロ攻撃を受けやすい標的)」だからだ。2009年に政府軍がテロ組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」を制圧して内戦が終結し、スリランカの社会情勢は安定した。テロに備えて警察や非軍事の情報収集能力を発展させる必要性には迫られなかった。

その反面、政治的には不安定な状態が続いている。ちょうど半年前、マイトリパラ・シリセナ大統領がラニク・ウィクラマシンハ首相を解任したが、結果的に最高裁が大統領の独裁的な決定を違憲とする判断を示し、ウィクラマシンハがあらためて首相に再任されるという政治的混乱が起きている。

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