スリランカ連続自爆テロで蘇ったイスラム国の悪夢
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月26日 18時20分
大統領の試みは失敗したが、その後の両派の睨み合いのなかで、ウィクラマシンハと閣僚たちは、情報当局による状況説明から排除された。インドの情報当局RAWが、NTJがイースターにテロを起こそうとしているとスリランカ政府に複数回送ってきた警告さえ、知らなかったと首相派は言う。
そのため、遠隔地に蓄えられた大量の爆発物が見つかるなど事前にいくつかの発見があり、そしてインド当局から警告があったにもかかわらず(最後の警告は、自爆テロのわずか数時間前だった)、スリランカ政府と治安当局は虚を衝かれてしまった。
内戦が終結し、政争に明け暮れる中で、スリランカ政府は差し迫ったテロの脅威などないと自らを欺いてしまったのだ。
他に狙われやすい国は
イースターを狙った連続テロが、ISがまだ生きていることを見せつけたとするなら、精力的で資金も豊富なこのテロネットワークが次に狙うのはどこなのか。
スリランカ・テロでは大きな成功を収めたとはいえ、ISがここに拠点を築くとは考えにくい。スリランカ政府と国民がテロのトラウマから立ち上がり、連帯を新たにすれば(今年の終わりに選挙があるので怪しいが)、またISに狙われて最悪の悲劇が繰り返されることはないだろう。
ではISは他のどこに攻撃対象を見出すのか。インドとバングラデシュにはいつでもチャンスがある。中央アジアの多くもそうだ。東南アジアでは、マレーシア、タイ、フィリピンが危険だ。
マレーシアは、昨年民主化路線に復帰して以降、より強く安定した国として台頭している。だが、テロの脅威と警戒の必要を認めていない点は心配だ。王立マレーシア警察の特殊部隊が長年かけて築いてきた優れたテロ対策も過小評価されている。
タイとフィリピンは政治的にそれほど安定しておらず、自分たちが認めるよりも不安定でもろい。いずれも、南部の過激派がバンコクやマニラでテロを行うはずはないと自らに思い込ませている。
スリランカの人々がイースターの自爆テロ攻撃でいかに高い代償を払ったかを忘れることがあってはならない。
Greg Barton, Chair in Global Islamic Politics, Alfred Deakin Institute for Citizenship and Globalisation, Deakin University
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
グレッグ・バートン(豪ディーキン大学教授)
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