トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月6日 12時30分
5月1日、ホンハイの郭台銘会長はホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。会談中、郭氏は米国国旗と、北京が認めない「中華民国」の国旗を付けた青い帽子をかぶっていた。その狙いは何か?米中台のゆくえを追う。
中華民国とアメリカの国旗を付けた帽子の意味
世界最大のハイテク製品受託生産企業である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(以下、ホンハイ)の郭台銘(かく・たいめい。Guo-TaiMing)会長が、5月1日、トランプ大統領と会談した。
彼はホワイトハウスに入る際に、青い地色に「中華民国」の国旗とアメリカの国旗をあしらった野球帽をかぶっていた(RFI報道。郭氏が手にしているのは後述するトランプ大統領サイン入りのコースターと、そのコースターにサインしたペン)。
郭氏は4月17日に、国民党から来年の総統選に立候補すると宣言している。
一方、「中華民国」という国家が存在することを中国(中華人民共和国)は認めていない。
1971年7月9日、ニクソン政権時代のキッシンジャー(元)国務長官が忍者外交により訪中し、「一つの中国」を取り付けてから、中国は「中華人民共和国を唯一の中国を代表する国家」と認めさせた上で、同年の10月25日に国連に加盟した。この日、アメリカの裏切りに激怒した「中華民国」代表の蒋介石総統は国連を脱退。
かくして中国、中華人民共和国=北京政府の天下となったのである。
アメリカのお墨付きを手にした中国は一気呵成に「一つの中国」を旗印として、世界中の多くの国と「一つの中国」を条件に国交を結び、絶対に「中華民国」という「国家」の存在を認めさせていない。
その中国の習近平国家主席や李克強首相とも仲睦まじい郭氏は、親中的傾向が強すぎるとして台湾での人気が今一つだ。
そこで、頭に禁断の「中華民国」の国旗「青天白日満地紅旗」を掲げ、それをアメリカ国旗と並べることによって、「親中ではなく、親米であり、アメリカと仲良くやっていくのだ」ということを台湾国民およびアメリカにアピールしようとしたものと解釈できる。
上述のフランスのRFI報道を始めとした多くの中文メディアによると、トランプ大統領との会見後、郭氏は以下のように記者団に語っている。
●トランプ大統領との会談の間、私は最初から最後まで、「中華民国」の国旗を付けたこの帽子をかぶっていた。それによって「中華民国」の存在と尊厳をアピールした。
●もし私が中華民国総統に当選したら、中華民国総統としてホワイトハウスでトランプと会談することだろう。もし、それが出来なかったら、私は能力のない人間だということになる。少なくともアメリカは私の訪米を反対しないだろう。反対するのは北京だ。北京は私に(台湾に)、それだけの活動できる空間を与えるべきだ。
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