徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月14日 16時20分
そのような宣言は、裁判所の判決を尊重しつつ、現実的な問題解決に寄与する独創的な方法をもたらすだろう。例えば鉄鋼大手のポスコなど、日韓請求権協定に基づき、日本政府から賠償金を受け取っている韓国企業に賠償の一部を負担させる方法もあるだろう。一方、日本企業は訴えを起こした元徴用工に対して、法的な賠償金ではなく、あくまで自発的な支援金を支払うなど、象徴的な誠意を示すことができる。
この問題を解決しても、日韓関係が完全に修復されることはないだろうが、節度ある外交協議を復活させることはできる。難しい問題は残っていても、両国が二国間関係を守る努力をすることは必要不可欠だ。さもないと、現在の亀裂は、超えることのできない巨大な溝に成長する恐れがある。
日韓関係が致命的に悪化すれば、その影響は両国を大きく超える領域にまで及ぶ。北朝鮮は今、米トランプ政権が制裁を緩和しなければ、核またはミサイル発射実験を再開する可能性をちらつかせている。日韓関係が崩壊すれば、北朝鮮を抑止し、その脅威を封じ込める努力は一段と不確かになるだろう。もちろんアメリカが中国の台頭を抑止する上でも、良好な日韓関係は重要なカギとなる。
日韓関係の完全に近い崩壊は、グローバルな視点から見ても、防ぐべき重大事なのだ。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2019年5月14日号掲載>
※5月21日号(5月14日発売)は「米中衝突の核心企業:ファーウェイの正体」特集。軍出身者が作り上げた世界最強の5G通信企業ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)。アメリカが支配する情報網は中国に乗っ取られるのか。各国が5Gで「中国製造」を拒否できない本当の理由とは――。米中貿易戦争の分析と合わせてお読みください。
J・バークシャー・ミラー(日本国際問題研究所上席客員研究員)
この記事に関連するニュース
-
ポスコが2億円追加寄付=元徴用工訴訟の解決資金に―韓国
時事通信 / 2024年9月19日 19時44分
-
日韓対立の克服は可能か? 両国のZ世代がぶつけ合う本音
毎日新聞 / 2024年9月19日 8時0分
-
北東アジア平和三大リスクは「北朝鮮問題、サイバー攻撃、米中対抗」―香港メディア
Record China / 2024年9月15日 21時0分
-
韓国政府への賠償請求棄却 元徴用工、相手は日本企業
共同通信 / 2024年8月28日 21時51分
-
韓国の徴用工訴訟、日本企業の賠償責任を認める判決相次ぐ=韓国ネット「当然の勝利」
Record China / 2024年8月23日 21時10分
ランキング
-
1先住民が遺した壁画に「当時の人類が見たはずがない生物」が描かれていた「謎」...南ア大学チーム
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月22日 13時5分
-
2「慰安婦は強制ではなかった」韓国・大学教授の発言に学生ら騒然
KOREA WAVE / 2024年9月22日 11時56分
-
3日米豪印、海洋安保協力拡大へ 中国念頭に「威圧的な操船」非難
ロイター / 2024年9月22日 15時20分
-
4バイデン氏、中国が「われわれ試している」 クアッド会議でオフレコ発言拾われる
AFPBB News / 2024年9月22日 12時45分
-
5マレーシア警察、養護施設での児童虐待容疑で355人逮捕
AFPBB News / 2024年9月22日 14時39分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください