中国、キャッシュレス先進国ゆえの落し穴──子の借金が親に降りかかる
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月16日 18時40分
大学のネット決済比率は98%
中国のリサーチ会社であるIResearchの「2018年大学生消費洞察報告」によると、大学生の日々の生活はネットによって成り立っていることが分かる。
大学生のうち、90.7%はネット通販の淘宝(タオバオ)を日常的に使い、生活用品を揃えている。大学生のネット決済の使用率は96.8%で、もはや現金を代替しているといえよう。パソコンやスマホなど高額商品を買う場合は、クレジットアプリで分割購入も可能で、およそ半数に相当する50.7%が使用している。
自身の支払能力にかかわらず、消費や入手が可能なため、物の所有や機会の均一化が可能となったともいえよう。しかし、金融リテラシーがしっかりしていない大学生が、気づかないうちに多額の債務を抱えてしまうといった事態も起きている。
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1 2019年1月29日付、経済日報、「70後存銭、80後投資、90後負債!超前消費引発年軽"負翁"頻現」、http://news.cnnb.com.cn/system/2019/01/29/030023879.shtml
例えば、「友達のスマホを不注意で壊してしまった。修理代として現金で3,000元(およそ5万円)が必要」となった女子大生のケース2。本人は現金収入がないため、ネットのレンディングで3,000元をこっそり借りた。その後15ヵ月の間、その債務は55社間で違法に譲渡が繰り返され、気づいたときには69万元(1,100万円)にまで膨れ上がってしまった。両親は驚いて自宅を抵当に入れ、借金をして58万元を準備したものの11万元足りない。違約金や延滞金がかさむ中で本人が自殺未遂をしたことから、両親が公安当局に伝えるに至り、事件が明るみになった。
また、就活生に、優良企業への入社をチラつかせながら、高額な研修費を支払わせるためにレンディングを誘導するケース。更に悪質な場合は、貸付に際してスマホに保存している本人や同級生の個人情報を提供させ、支払いが遅れたらその個人情報で本人を脅すケース。また、個人情報の替わりに本人の写真を送らせて、写真を拡散するとして脅すケースなど、その手法は枚挙にいとまがない。ケースによっては本人が将来を悲観して自殺したり、家族の一家離散にまで発展しており、中国ではすでに社会問題となっている。
現金拒否を是正する動きも
当然のことながら、貸し手の方に多くの問題があり、政府も違法な業者を取り締まるなどの対策は行っている。しかし、キャッシュレス化にともなう利便性、スピード感、普及度ばかりが追求され、それを活用する側のリテラシーの育成を置き去りにしたままでは、そのしわ寄せは、若者や高齢者など社会的な弱者に向かってしまう。
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