ハーバードの学生から渋谷への提案「雑居ビルで新しい働き方を」
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月21日 18時5分
また、スタートアップ企業などを支援するだけでなく、もうひとつの可能性にも言及している。それが、女性の起業家や労働者たちのコミュニティを育てることだ。こうしたエリアにはアパートや家屋も多くあるため、職住接近でかつ自由な働き方を実現できるのではないか、という提案だ。
太田氏曰く、「渋谷には働く場所としてのレガシー(輝ける過去)がある」。ネットエイジ(現ユナイテッド)、サイバーエージェント、DeNA、ミクシィといったIT企業は、いずれも渋谷で誕生し、急成長したのだ。1990年代末から2000年代初期の「ビットバレー」と呼ばれた現象だ。
現在でも渋谷は、東京23区のどのエリアよりもIT企業が多いという。若くてクリエイティブな起業家たちにとって渋谷という街は、今も、自分たちの拠点にしたいと思える魅力を放っているのだろう。エミリーの提案は、そうした動きをさらに後押しし、花開かせるものとなるかもしれない。
社会課題の先進国・日本は取り組み甲斐のある国
もちろん、学生たちの提案の中には「日本に住む人間にとっては『あり得ない』と思わせる発想や奇想天外に見える考え方」もある。だがその一方で、一連のセミナーを通して、実際に議論する価値があると思われるような指摘や提案も次々に出てきたという。
実は、建築設計や都市計画を専攻している学生を日本に送り込んで、長期にわたって滞在することで課題に取り組ませる、という濃密なプログラムは、ハーバード大学デザイン大学院だけがやっているものではない。近年、特に北米とヨーロッパの大学院で増えているそうだ。
世界的に見ると、日本は急速に近代化を遂げた後の複雑な状況に、一足先に入り込んだ国だ。社会の課題を通して建築や都市を考える、という進歩的な教育をするなら、日本は取り組み甲斐のある国なのだと思う。(『SHIBUYA! ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える』222ページより)
建築や都市の未来を考えることは、そこで暮らす人や働く人、何らかの形で関わるすべての人の未来に思いを馳せることにつながる。学生たちのアイデアに刺激を得て、これからの暮らし方や働き方、そして生き方を考えてみるのもいいかもしれない。
『SHIBUYA! ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える』
ハーバード大学デザイン大学院/太田佳代子 著
CCCメディアハウス
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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