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英連邦オーストラリアに英国王は必要か?

ニューズウィーク日本版 / 2019年5月25日 16時20分

<立憲君主制は不条理だが、王室は政治家の監視役を担っている>

われらがオーストラリアの著名作家ドン・ワトソンは昨年、この国を英国王を元首とする立憲君主制から共和制に移行させようという議論に異を唱えた。現地誌ザ・マンスリー4月号への寄稿には、こうある。

「独裁者がいっぱいいる世界にあって、エリザベス女王とその子や孫は、ある意味、反独裁を代表している」

そして、こうも続けた。

「私たちの民主主義は問題を抱えながらも機能している。共和制に移行すれば問題が解決できるとは思えない」

周知のとおり、オーストラリアには英国王の代理として豪政府が指名する総督がいて、事実上の儀礼的な国家元首の役を果たしているが、一方でエリザベス2世を元首と仰いでもいる。

憲政上の不条理と言えるが、筆者もワトソン同様、これでいいと思っている。政府の儀礼的権威と実際的権力を分離することによって、政治家のエゴの肥大を監視できるからだ。

政治について悲観論が高まる今、立憲君主制の不条理こそが自由な民主主義を守っているのではと問うてみるのは悪くない。そう問題提起をするだけで、反動的だとか特権階級の味方だとか非難されるリスクは承知の上だ。

それでも私たちは、王室の在り方や国王に対する国民感情の問題と、露骨な専制主義の監視役としての王室の存在理由を区別して考える必要がある。

英国内でも英連邦諸国でも、王室の人気はこれまでになく高い。共和制論者のマルコム・ターンブル前豪首相でさえ、ヘンリー王子やメーガン妃と一緒に写真に納まりたいと思っている。やはり英連邦の一員であるカナダの友人に聞いてみたら、共和制なんて言いだしたら笑われるという答えだった。

英連邦(コモンウェルス)の加盟国中、英国王を元首と定めている国は15あるが、あえて現状を変えようとは考えていないようだ。ちなみに、英連邦加盟国の過半は共和制だ。その一方、英連邦に加盟しながら英国王とは別の王様がいる国もある。ブルネイとスワジランドは事実上の絶対王制だ。

君主制は政治的野心の解毒剤

君主制の概念そのものを、不条理で不快な封建制の遺品と切って捨てたい気持ちは理解できる。王室を取り巻く盛大な儀式はどう見ても滑稽だし、王室の維持には金がかかる。

しかし世界を見渡せば、立憲君主制でやっている国の多くは素晴らしく民主的で格差も少ないと言えるのではないか。スカンディナビア諸国にもベネルクス3国にも世襲制の君主がいる。

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