「トランプ大統領が潔白とは言っていない」──ロシア疑惑のムラー特別捜査官が沈黙破る
ニューズウィーク日本版 / 2019年5月30日 16時40分
ナドラーは今月に入り、ムラーに公聴会で証言するよう求めたが、ムラーが応じないため、召喚状を出す可能性もあると警告していた。
記者会見でムラーは、議会で証言するつもりはなく、最終報告書が「私の証言」だと断言した。
「特別検察官事務所からは、いかなる形であれ、われわれの報告書以上の証言は出てこない。報告書にはわれわれの発見と分析、われわれが下した決定の理由が書かれている。われわれは慎重に言葉を選んで書いた。それを読めば全て明らかなはずだ。報告書が私の証言だ」
バー司法長官がムラーの公聴会出席を妨げているとの憶測もあるが、ムラーはそれを否定した。ちなみにバーはアラスカ州アンカレッジでの公務を理由に、司法省での記者会見には同席しなかった。
「(公聴会に出ないことは)自分で決めた」と、ムラーは述べた。
ナドラー委員長が実際に召喚状を出す準備をしているのか、本誌は司法委員会に問い合わせたが、今のところ回答はない。ナドラーは、記者会見でのムラーの発言を受けて、「トランプ大統領の犯罪と嘘、その他の不正行為の究明は、議会に委ねられた。われわれはそれに応じる」と声明を出した。
下院司法委員会の共和党のメンバーを率いるダグ・コリンズ下院議員も声明を出し、ムラーに「公聴会に出席し、議員の質問に答えてほしい」と要請したが、一方では、捜査は終了したのだから「前に進むべきだ」と主張。「共謀も妨害もなかった」という、トランプと共和党の決まり文句を繰り返した。
潔白は証明されていない
会見の最後にムラーは、ロシアが2016年の米大統領選に介入を試みたのは事実だと、改めて強調した。
「われわれの告発の中心的な申し立ては、わが国の選挙に介入するための、多様かつ組織的な工作だったことを、最後にもう一度述べておきたい。これは、全てのアメリカ人が注意を向けるに値する申し立てだ」
ムラーの報告書の黒塗り版が公開されたのは、バー司法長官が4ページにまとめた要約を発表した数週間後だ。ムラーは、バーの要約により、捜査結果が誤った形で伝えられたとして不満を表明。後に公開された2通の手紙で、バーの要約は報告書の「文脈も性質も、特別検察官事務所の仕事と結論の中身も十分に捉えていない」と抗議。バーの要約が「巻き起こした誤解を少しでもなくすために」、自分たちが書いた序文と概要をただちに公開するよう求めていた。
「われわれの捜査結果の重要な側面について、国民の間で混乱が起きている」と、ムラーはバーに宛てた3月27日付けの手紙で指摘した。「これは司法省が特別検察官を任命した中心的な目的、すなわち捜査結果に関する国民の信頼を確保するという目的を揺るがしかねない事態だ」
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