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米中経済戦争の余波──習近平の権力基盤が早くも揺らぎ始めた

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月5日 18時25分

アメリカは多党政治で報道・言論の自由があり、司法が独立し、私有経済の条件が保障された制度の国だが、中国はそれとは反対だ。閉鎖的で、法治はなく人治のみがあり、外国企業の待遇も不平等。これが制度の衝突だ。

力量の衝突について言えば、中国のエネルギーは「負能量(マイナスエネルギー)」、アメリカは「正能量(プラスエネルギー)」の国だ。一方は人類に好影響を与えるが、もう一方は悪影響を与える。米中の争いは文明、制度、力量の「決闘」なのだ。

今回のアメリカと中国の交渉は清朝とイギリスの交渉と非常に似ている。1840年にアヘン戦争が開戦するまで、乾隆帝から始まったイギリスと清朝の貿易は清朝にとって黒字、イギリスにとって赤字の状態が続いた。イギリスは清朝のお茶やシルクを大量に購入したが、清朝は何も買うものがなかった。

(戦争が終わって1842年に)南京条約が結ばれるまでは、清朝がイギリスに対して不平等だったが、条約締結後はイギリスが清朝に対して不平等になった。



また、清朝には「扶清滅洋」を掲げた義和団という愛国主義団体があったが、現在の中国には五毛党(1件当たり5毛<約6円>の報酬で、中国政府に有利な発言をネット上に書き込む世論工作員)や、「自乾五(自発的に政府擁護の論陣をネットで展開する中国ネットユーザー)」がいる。義和団は清朝に反対する人々を「漢奸(売国奴)」と呼んだが、五毛党や自乾五も中国政府と異なる意見を持つ者を「漢奸」呼ばわりしている。

宗教弾圧も似ている。清朝と義和団はキリスト教の伝道師を殺害したが、現在の共産党はキリスト教の教会だけでなく、新疆ウイグル自治区のイスラム教モスクを破壊している。清朝はイギリスと条約を結んだあと、条約を反故にして戦争に至ることを繰り返したが、いったん合意に達しかけてそれを反故にする現在の中国の交渉はそれと同じだ。清朝は制度の改善を拒否したが、現在の共産党も制度の改善を拒否している。

――歴史を振り返ると、アメリカは中国を一貫して重視してきた。第二次大戦で日本と戦争をしたのは、中国を日本に渡したくなかったから、とも言える。であれば、米中はいつか「手打ち」をするのではないか。

イギリスは清朝政府から香港を租借したが、土地が欲しかったわけではなく、必要としたのはあくまで商人たちの居住地だった。イギリスが清朝に求めていたのは市場。清朝に土地を求めていたのはロシアだ。アメリカも土地ではなく、開放された市場と平等な貿易を求めていた。中国のネット民にこんな笑い話がある。「中国政府は現在アメリカを敵に、ロシアを友人にしているが、失った土地は友人の手から取り戻された」と(笑)。

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