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米中経済戦争の余波──習近平の権力基盤が早くも揺らぎ始めた

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月5日 18時25分

鄧小平は1979年に党内の反対を押し切って訪米したが、その際「長い間観察した結果、アメリカの友人は豊かな国が多いが、敵は貧しい国が多い」と語った。以来、米中関係は共産党にとって最も重要な対外関係になった。だが現在、習近平は対米関係をうまく仕切れていないことで党内から批判されている。しかし彼には米中関係をうまく仕切る能力がない。

なぜか。現在の状況を乗り切るためには、変化に適応する必要がある。しかし、習近平と(ブレーンとされる)王滬寧(ワン・フーニン、共産党政治局常務委員)にはその能力がない。文革や毛沢東時代に戻ることを思想的武器にしている彼らには無理だ。改革すべきなのに改革せず、開放すべきなのに開放しない。当時の清朝と同じだ。



――米中の衝突は中国共産党の政局にどのような影響を与えるだろうか?

5月13日、3つの出来事があった。この日の夜、中国中央電視台(CCTV)のニュース番組『新聞聯播』は、中国が600億ドル分のアメリカからの輸入品に報復関税を掛けると発表した。この日、共産党はそれを決める政治局会議を開いたのだが、午前中には李克強(リー・コーチアン)首相が会議を開き、「大規模失業を発生させない最低ラインを死守する」という決議を公表していた。

その後に開かれた政治局会議は集団議決だったという。これ以前は習近平が1人で決定していたが、この日から集団議決に変わった。アメリカとの貿易交渉が頓挫したことの反省からだ。

李克強が言っていることは、習近平や王滬寧とは違う。習や王は、中国経済は力強く、恐れる必要はないと主張していた。李克強が会議を開いて「大規模失業を発生させない最低ラインを死守する」と決議したのは、おそらく大規模な失業の危機が迫っているからだ。両者のトーンは異なる。

習近平の権力は大きくそがれている。5月3日、習は(党内の圧力で)妥結しかけていた貿易協議を反故にした後、「将来発生する悪い結果について全て責任を持つ」と発言した。しかし、5月5日にトランプは関税を25%に上げた。政治局会議が集団議決に変わったのは、習が「責任」を取った結果だ。一方で、習は今回の集団議決への移行で肩の荷を下ろした、と見ることもできる。

習近平は多くの難題を抱えているが、これまでは取り沙汰されることのなかった後継者問題が浮上している。もし、習が20年間政権を握るなら、後継者としては胡錦濤(フー・チンタオ、前国家主席)の息子の胡海峰(フー・ハイフォン、現浙江省麗水市党委書記)が考えられた。しかし10年しかやらないとなると、その後継者は陳敏爾(チェン・ミンアル、重慶市党委書記)か陳全国(チェン・チュアンクオ、新疆ウイグル自治区党委書記)だ。

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