自殺した人の脳に共通する特徴とは
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月8日 15時30分
この研究では、被験者に30の単語を読み上げた。「精神疾患は特定の物事への考え方を変える」と、カーネギー・メロン大学認知脳画像センター所長で、心理学教授のマーセル・ジャストは指摘する。「強迫観念が強いと、『警察』という単語に異なる脳活性化パターンを示す。自殺願望の場合も特定の単語に対して同様のことが起きる」
機械学習アルゴリズムは6つの単語(「死」「残酷」「困難」「気楽」「よい」「称賛」)が引き起こす脳内パターンを見るだけで、自殺願望がある人を90%の確率で特定できると、ジャストとピッツバーグ大学公衆衛生大学院のデービッド・ブレント教授は突き止めた。
被験者が示した脳活性化パターンは体系的で明白だった。なかでも顕著だったのが、自殺願望がある場合、6つの単語が「自己言及」に関わる脳内領域をはるかに活性化させたこと。つまり、人によっては戦争などを連想するはずの「死」という単語は、自殺傾向がある人の場合は自己についての考察に関わる脳内領域を強く刺激する。
薬理学者であり、エール大学医学大学院の精神医学講師に就任予定だったリッチマンが、ジャストらの研究結果を知っていた可能性は高い。それでも彼は自殺した。
「知識が行動の変化につながるとは限らない」と、ブレントは語る。「彼は6歳のわが子を亡くした。家族を失った人は悲痛が和らがない場合、特に自殺リスクが高い。鬱や心的外傷後ストレス障害(PTSD)だったり、心の傷が癒えていなかったなら、そのどれもが自殺の引き金になり得た。優秀な学者だったという事実は無関係だ」
<本誌2019年6月11日号掲載>
※6月11日号(6月4日発売)は「天安門事件30年:変わる中国、消せない記憶」特集。人民解放軍が人民を虐殺した悪夢から30年。アメリカに迫る大国となった中国は、これからどこへ向かうのか。独裁中国を待つ「落とし穴」をレポートする。
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)
この記事に関連するニュース
-
心拍数を下げる脳の仕組みを動物実験で解明…東大の研究チームが発表
読売新聞 / 2024年6月21日 3時0分
-
韓国人の自閉症スペクトラム障害誘発の遺伝的変異を究明…韓国の研究チーム
KOREA WAVE / 2024年6月15日 12時0分
-
ストレスが脳を壊す!脳神経内科医が教える脳の健康とストレスの意外な関係性
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月15日 11時0分
-
睡眠は脳を活性化させる!脳神経内科医が教える脳の健康と睡眠の意外な関係性
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月13日 11時0分
-
歯みがき行動は歯の健康に寄与するだけではなく、自律神経に影響を与え、前向きな心理状態に変化させることを確認
PR TIMES / 2024年5月24日 16時45分
ランキング
-
1またベトナム政治局員辞任 1年半で異例の7人目
共同通信 / 2024年6月21日 23時0分
-
2EU、25日から加盟交渉=ウクライナとモルドバ
時事通信 / 2024年6月21日 21時57分
-
3北朝鮮を訪問したプーチン、金正恩の隣で「ものすごく退屈そう」な様子の動画が話題 「なぜこんなことに...」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月21日 18時14分
-
4イスラエル、ガザ全域で攻勢 45人死亡 ラファ攻撃加速
ロイター / 2024年6月22日 6時46分
-
5米、グアムに海兵沿岸連隊配置へ 司令官「中国に対抗」
共同通信 / 2024年6月22日 10時29分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください