アメリカ心理学会「体罰反対決議」の本気度──親の体罰を禁じるべき根拠
ニューズウィーク日本版 / 2019年6月21日 17時15分
ただし、体罰の有効性を主張するメタ分析もある。Gershoffらから遡ること10年前に発表されたLazelere & Kuhn (2005)がそれである。Lazelereらへの反論はGershoffらも行っているのだが、Lazelereらは有効性を検証するための強力な方法を用いており、Gershoffらの反論は十分なものではないと思われるため、こちらも取り上げておきたい。
他のしつけの補助として行う体罰ならOK?
Lazelere & Kuhnは、先行研究で用いられてきた「体罰」の概念が、軽度の身体的罰だけでなく虐待にあたるような強度の、あるいは頻繁な身体的暴力をも含んでいることを問題視した。虐待であれば当然子の発達に望ましくない影響を及ぼすであろうが、だからといって適切な強度・頻度でなされる体罰の効果まで否定されるものではないのではないかと。
また、体罰の効果そのものを検討するよりも、他のしつけ方略の効果との差を検討することが必要であるとも考えた。そうすることによって、子どもにもともと問題があったために体罰を受けた後にも問題行動をとるだけといった説明を排除できるし、体罰を含めどのしつけ方略を選択するべきかという現実的な問いの答えも得られるからである。
そこで、Lazelereらは、体罰の使用の仕方を「条件付き体罰」、「慣習的体罰」、「激しい体罰」、「主たる方略としての体罰」の4つに分類し、その観点から26の先行研究を分析した。
「条件付き体罰」は、「2~6歳児が他のしつけ方略に従わないときに体罰を行う」のように、他のしつけ方略をサポートするために、抑制されたやり方で行われる体罰である。「慣習的体罰」は頻度や使用条件などの面で一般的な使用の仕方「激しい体罰」は方法や強度が通常の範囲を逸脱したもの、「主たる方略としての体罰」は他の方略よりも体罰を頻繁に用いるものである。
この4種類の体罰のそれぞれについて、「従順さ」「反社会的行動」「良心」「ポジティブな行動と情動」の4種類のアウトカムについて検討した結果、他のしつけ方略に比べて子どもの発達に有害であるのは、「激しい体罰」「主たる方略としての体罰」のみであった。つまり、体罰が不適切な仕方・強度でなされるような場合や、他の方略よりも優先して用いられるような場合には、体罰は好ましくない結果をもたらしていたのである。
一方で、「慣習的体罰」は、他のしつけ方略に比して有益とも有害ともいえなかった。さらに「条件付き体罰」は、他のしつけ方略の多くよりも良いパフォーマンスを示していたのである。
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