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終わりなきロヒンギャの悲劇

ニューズウィーク日本版 / 2019年6月27日 17時40分



これまで帰還は、難民問題の「最も好ましい恒久的な解決策」として国連や各国政府などによって推進されてきた。だが、難民問題に詳しい大東文化大学の小泉康一名誉教授によれば、この解決法は国家側の利己心によって生まれたものだ。

バングラデシュがそうであるように、難民受け入れ国は負担から脱するため、早く難民に出て行ってほしいと願う。いま求められているのは難民に衣食住を与え続けてそのうち帰ってくれるのを待つより、「持続可能な避難地」をつくるために受け入れ国に経済支援をすることだと、小泉は指摘する。

ロヒンギャたちに迫るもう1つの危機が雨期だ。バングラデシュは6~10月の間、モンスーン災害に見舞われる。山地を切り開いてできた難民キャンプは土壌が緩く、昨年も地滑りによって家屋を失う人や死傷者が続出した。バングラデシュのアブドゥル・モメン外相は今年4月、「モンスーンによって難民キャンプで死傷者が出たら、帰還にも島への移住にも反対した人たちの責任だ」と発言している。

今いる場所に受け入れられることも、故郷に帰ることもできない。国家のエゴに翻弄され、避難後もロヒンギャの未来は踏みにじられていく。

<本誌2019年7月2日号掲載>


※7月2日号(6月25日発売)は「残念なリベラルの処方箋」特集。日本でもアメリカでも「リベラル」はなぜ存在感を失うのか? 政権担当能力を示しきれない野党が復活する方法は? リベラル衰退の元凶に迫る。



増保千尋(ジャーナリスト)


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