もう1つの<異端>大学教授──学歴はなくとも研究業績は博士に匹敵する人たち
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月2日 18時50分
彼の研究姿勢のユニーク性は、科学技術の社会的責任性を追求している点にある。生命科学を倫理的な側面から再検討していく視点、例えば、人類における優生政策を歴史的に俯瞰した上で、ナチス・ドイツにおける優生政策がユダヤ民族の大虐殺(ポグロム)を生み出してきたということの意味を問い直しているという点である(『優生学と人間社会』米本昌平他、講談社現代新書、2000年)。
原子力の安全性問題、生命倫理問題、地球環境問題等に対する彼の批判的な見解にみられるように、科学技術への過剰な依存が人間社会に何をもたらしたものかを常に監視し、警告しているのが彼の科学技術論の基本である。
奥村氏は旧制第六高等学校入学後、戦後の学制改革により、岡山大学法文学部卒業となり、産経新聞記者、日本証券経済研究所主任研究員を経て、龍谷大学経済学部教授や中央大学経済学部教授に就任している。彼は「法人資本主義」という形で、日本の資本主義の構造的特質を明らかにしたことで著名である。
中沢氏は高校卒業後、郵便局に勤務し、全国逓信労働組合本部勤務を経て、1989年(当時、44歳)に立教大学法学部に入学した。1993年に卒業。中小企業のフィールドサーベイを通じて、日本の中小企業の優秀性を実証的に証明した(『中小企業新時代』岩波新書、1989年)。彼は豊富なフィールドワークをもとにした中小企業論を数多く発表し、兵庫県立大学・福井県立大学・福山大学等の教授を歴任し、現在は、兵庫県立大学大学院客員教授となっている。
民俗学者の赤坂氏は東京大学文学部国史学科卒業後、どのようにして、民俗学の学問的な専門知識やフィールドワークを深めていったのかについてはよくわからないが、彼の数多くの著作の中でも、初期の著作である『異人論序説』(砂子屋書房、1985年)、『排除の現象学』(洋泉社、1986年)、『王と天皇』(筑摩書房、1988年)、『境界の発生』(砂子屋書房、1989年)、『象徴天皇という物語』(筑摩書房、1990年)、『山の精神史』(小学館、1991年)をみれば、自らの専門性を極めていくための学問的な精進をされたことがよくわかる。
そのためか、1988年から大学の非常勤講師(法政大学・立教大学等)を務めている。その後も数多く民俗学関係の著作を刊行し、1992年には新設の東北芸術工科大学教養部助教授に就任し、1996年には同大学教授、1999年に同大学東北文化研究センター所長となっている。
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