「地球平面説」が笑いごとではない理由
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月3日 11時15分
18年11月、私はコロラド州デンバーで開かれた「フラットアース国際会議(FEIC)」に参加して、このセオリーを自ら実践してみることにした。FEICは、地球は平面だと信じる人たちが年に1度集まるド派手なイベントだ。講演者がマルチメディアを駆使して、「私たちはグローバリスト(地球は丸いと主張する人々)に何千年もだまされてきた」と言うと、約600人の聴衆から拍手喝采が起こった。
世間一般でどれほど支持を得られているかという点では、フラットアース派は地球温暖化否定論者やワクチン反対派をかなり下回る。しかし、彼らの思考回路は驚くほど似ている。その意味で、FEICは、科学否定論者全般の考え方を理解し、対抗方法を見つけるいい機会になりそうだ。
キリスト教原理主義と陰謀論
NASAの月面探査もでっち上げか JSC/NASA
まず、はっきりさせておくべきなのは、フラットアース論者は大真面目だということだ。当然だろう。21世紀の今、「地球は平面だ」などと言えば嘲笑される可能性があることは、本人たちも覚悟の上だ。また、ほとんどのフラットアース論者は、以前は地球は丸いと思っていた。だがある日、「真実に目が覚め」て、自分をだまそうとする世界的な陰謀に気が付いたと言う。その口ぶりは、まるで宗教的な経験を語っているかのようだ。
とはいえ、「地球は平面だ」と言った瞬間に多くの疑問が生じる。具体的にどんな形状なのか(円盤状で「南極山脈」が周縁に広がっている)、誰がその「真実」を隠しているのか(政府、NASA、パイロット......)などだ。
私はFEICに2日間参加し、「科学的方法によるフラットアース論」「NASAその他の宇宙に関する嘘の数々」といったセミナーに出席した。
1日目は黙って彼らの主張を聞いた。参加者のバッジを着け、ひたすらメモを取るのみ。そして2日目にようやく口を開き、言うべきことを言った。
やりとりを重ねるうちに見えてきた。フラットアース説はキリスト教原理主義と陰謀論の奇妙なミックスで、一部の人々にとってそれは信仰のようなものなのだ。
プレゼンはほぼ全て地球は丸いという説の「虚偽性」を裏付けるか、平面説の正しさを示す「科学的な証拠」を並べ立てるもので、突っ込みどころだらけのご都合主義的な議論に終始した。
まともに反論してもダメだと思った。どんな証拠を突き付けても、彼らは聞く耳を持たない。いわくNASAの衛星画像は捏造だ、回転する球体の上に海なんかあるわけがない......。
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