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「地球平面説」が笑いごとではない理由

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月3日 11時15分

今度は私が失笑する番だった。

「これを実証するために全てを懸けてきたあなたが、もう少しで決定的証拠が手に入るのに、諦めた、と?」

彼は首を振って、ほかの人と話をし始めた。

結局、私はこの会場で誰の考え方も変えることができなかった。それでも、私はある重要なことを実践した。対話を行ったのだ。

研究によると、データは人の考えを変えられない。人は、信頼できる人との対話を通じて考えを変える。私が信頼してもらえたと言うつもりはないが、時間を割いて多くの人と言葉を交わすことで、ある程度の信憑性を感じてもらえた自信はある。

科学否定論者を問答無用に切り捨てるのは賢明でない。それでは不信感が拡大し、ますます亀裂が深まるだけだ。科学者も一般の人たちも、もっと科学否定論者と対話したほうがいい。

科学否定論者は、放置するにはあまりに危険な存在だ。地球が平面だと主張する人たちは、一見すると人畜無害に思えるかもしれないが、新しいメンバーを引き込む方法を学ぶための研修会を開いたりもしている。



科学者のスペンサー・マークスはボランティアでフラットアース論者との対話に取り組んでいる Joel Forrest-Barcroft Media/Getty Images

自分たちの主張を子供たちに広めることにも熱心だ。ある人は、娘が学校で平面説を紹介したところ教師から発言を遮られたと不満を述べた。すると、それを聞いた研修会の講師は、教師がそばにいない遊び場で友達に話せばいいと助言した。

いまフラットアース運動は急速に拡大している。近年はアメリカの多くの都市でこの考え方を信奉する人たちの会合が開かれているし、プロバスケットボール選手のカイリー・アービングのように、地球が平面だと信じていると公言する有名人も現れている(アービングはのちに撤回)。

研究のプロセスについて語れ

科学否定論と戦うために科学者にできるのは、確率に基づいて物事を考えることの重要性をもっと語ることだ。それを通じて、科学における「証拠」に関する人々の思い込みを突き崩す必要がある。

どんなに優れた証拠があっても、科学は、間違いなく地球温暖化が起きていると断言することはできない。予防接種のワクチンの安全性も、そして地球が丸いことも断言はできない。科学で何が正しいとされるかは、仮説が100%確実かではなく、証拠に照らして妥当かを基準に判断される。

人為的な要因により地球温暖化が起きていることを示す「証拠」が誤っている確率が100万分の1ある場合、この仮説は100%確実とは言えない。しかし、妥当な仮説だと見なすのが合理的だろう。

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