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場当たり的なトランプ流外交が墓穴を掘る日

ニューズウィーク日本版 / 2019年7月9日 15時40分

「ディールの極意」の結果

トランプは、取りあえず交渉を続けることで(そして米韓合同軍事演習を中止することで)、北朝鮮による長距離ミサイルや核兵器の発射実験を凍結させようとしているのかもしれない。かつてトランプが任命したニッキー・ヘイリー国連大使(当時)は、この案を「屈辱的」として拒絶したものだが、今やトランプは、北朝鮮が近年これらの実験を行っていないことを、自らの大きな功績だとしている。

トランプは、北朝鮮に最大の圧力をかける戦略に戻ることもできないし(そんなことをすれば北朝鮮も核実験を再開する)、北朝鮮が非核化を実行する前に制裁を撤廃することもできない(そんなことは米議会が許さない)。つまり対北朝鮮外交でも、トランプは身動きが取れなくなっている。

G20サミットで中国の習近平と会談し、貿易交渉の再開で合意 Kevin Lamarque-REUTERS

中身はないが(ともすれば破綻しているが)、派手な取引に派手に投資して、派手に注目を集めることで、都合の悪いことから世間の目をそらす――。このパターンが、トランプのカジノビジネスにおける「ディールの極意」だったことは、専門家でなくても分かるだろう。

その結果、ビジネス界でトランプを信用するまともなパートナーはいなくなってしまった。同じことが外交の世界で起きようとしている。特にアジアでは、伝統的な同盟国がアメリカから離れていく恐れがある。

筆者はG20サミットのとき、日本と台湾の政府高官がトランプの言動にこれまでにないレベルの不安を示すのを目の当たりにした。トランプが訪日直前に、日米安保条約を不公平だと攻撃する一方で、北朝鮮には柔軟な態度を示したことは、関係各国を大いに当惑させた(トランプは、アメリカが日本を防衛するために戦っているとき、日本は「ソニーのテレビで見ているだけ」と語った)。

試されるアジアの同盟国

日本、韓国、そして台湾の企業は今、トランプの対中追加関税が恒常化すると考えて、サプライチェーンから中国を除外しつつある。これは対中強硬派のロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表にとっては勝利といえるが、事はそう単純ではない。



アジア地域の企業リーダーたちは、こうした中国抜きのサプライチェーンとは別に、中国中心のサプライチェーンが併存し、今後も成長していくと考えている。つまり今後、アメリカの影響力の及ばない中国主導の経済圏が生まれるかもしれないということだ。

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