トランプを「無能」と正直に言った英大使、事実上の更迭 「忖度」足りず?
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月11日 14時20分
<本国政府にトランプに関するネガティブな意見を送ってそれがたまたまリークされても、これまでなら辞める必要などなかった。それが今後は、怖くて本当のことが言えなくなる?>
ドナルド・トランプ米政権を「無能」などと批判した機密公電が流出し、物議を醸していたイギリスのキム・ダロック駐米大使が、7月10日に辞任した。この辞任劇は、ワシントンに駐在する世界の外交筋に衝撃を与え、今後の外交のあり方に深刻な影響を及ぼしかねない、と専門家は警告する。
「各国の大使や大使館職員は今後、これまでよりも報告の内容にずっと慎重になり、それが本国の安全保障を大きく損ないかねない」と、バラク・オバマ前大統領時代のホワイトハウスでグローバル・エンゲージメント担当ディレクターを務めていたブレット・ブルーエンは指摘する。「今後は、外交公電のなかで最も広く読まれる(外国首脳などに関する)率直な意見が、入らなくなってしまう」
2010年にウィキリークスが、大量の外交公電をリークした後も、そこに書かれていた内容のせいで辞任したり更迭された大使は一人もいなかったと、ブルーエンは言う。今回の辞任がどれほど衝撃的かわかるだろう。
<参考記事>英国はもう「帝国気取り」で振る舞うのは止めた方がいい 駐米大使が「トランプ大統領は無能」と酷評
トランプを「無能」としたダロックの公電は、何者かのリークを受けてデイリー・メール紙が7月6日に報じたもの。トランプは、ダロックを「頭がおかしい」「思い上がりの強い間抜け」などと罵倒した。
使命果たして更迭
米下院情報委員会のアダム・シフ委員長は、こうしたトランプの反応もまた、海外に駐在する米外交官たちの仕事に影響を及ぼす可能性があると指摘する。
「世界各地で働く外交官たちは、自国政府に率直な評価や助言を提供するのが仕事だ」と、シフは声明で述べた。もしもアメリカの大使がトランプのような外国首脳から、「頭がおかしい」「彼のことはもう相手にしない」などとしつこく中傷されたら、我々は憤慨するだろうし、それが当然だ。トランプが同盟諸国やその外交官に対するいじめを続ければ、アメリカが諸外国に派遣する外交官たちが仕返しを受けるかもしれない」
<参考記事>トランプの言うことは正しい
今回の一件は、イギリス政界にも波紋を広げている。当初、テリーザ・メイ政権は「本来の職務を果たした」としてダロックを留任していた。しかし、次期英首相の最有力候補でトランプの盟友でもあるボリス・ジョンソンは、ダロックを擁護しなかった。ダロックが辞任を決めたのもそのせいだと言われる。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
米下院、政府閉鎖回避のためのつなぎ予算法案を否決(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年9月20日 11時10分
-
トランプ氏暗殺未遂と民主党側の攻撃言語
Japan In-depth / 2024年9月18日 18時0分
-
米大統領選討論会は「互角」「トランプ氏はウクライナを見捨てない」 杉山晋輔元駐米大使
産経ニュース / 2024年9月11日 18時23分
-
米のアフガン撤収「安全より外見を優先」 共和主導の下院外交委、討論会を前にトランプ氏援護射撃
産経ニュース / 2024年9月10日 7時50分
-
安倍晋三氏の「天性の人たらし力」だけではない…トランプ氏との外交を成功させた"影の立役者"の正体
プレジデントオンライン / 2024年8月29日 8時15分
ランキング
-
1ロシア凍結資産運用で5兆円支援 EU表明、G7合意実施へ前進
共同通信 / 2024年9月20日 21時25分
-
2深圳の男児刺殺、自供した男には複数の前科…「電信設備の破壊」や「虚偽事実で公共の秩序乱す」事件起こす
読売新聞 / 2024年9月21日 7時25分
-
3深圳日本人学校の男児殺害に日本はもっと怒るべきだ
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月20日 15時58分
-
4韓国歌手が「整形の真相」衝撃告白…費用1億ウォン以上「自分のものは耳と目玉だけ」
KOREA WAVE / 2024年9月21日 7時0分
-
5ヒズボラ、爆発の数時間前までポケベル配布=治安筋
ロイター / 2024年9月21日 6時50分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください