原油高騰とタンカー危機、混迷するイラン情勢の行方を読み解く2つのキーワード
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月19日 11時7分
こうした事案の1つ1つが、有志連合構想を正当化する材料になり得る。
日本の中東依存度は9割
エネルギー資源の少ない日本にとって中東は極めて重要な地域だ。ほぼ全量を輸入に頼る原油は、現在ではその9割近くを中東産が占めている。
日本は「エネルギー安全保障」を掲げ、供給源を多様化させる戦略を取ってきた。かつて1970年代の石油ショックを教訓として、中東依存度を低下させてきた。その結果、1967年度に91.2%に達した中東依存度は、1987年度に67.9%まで低下した。しかしその後、原油価格が安かった時代を経て、再び中東に偏重するようになってきた。
輸入原油の8割が通ると言われるホルムズ海峡は、日本にとって最重要のシーレーンだが、トランプ氏は6月にツイッターで「なぜアメリカが他国のために無償で航路を守っているのか。船舶は自国で守るべきだ」と主張していた。
供給余力も楽観は禁物
今の緊迫したイラン情勢は2018年5月、トランプ米政権が核合意を離脱すると表明したのが発端だ。米国は11月に禁輸措置に踏み切った。日本など8カ国・地域は措置の適用が除外されて原油取引を行ってきたが、トランプ政権が19年4月に適用除外の撤廃を公表した。一連の動きにイラン側は強く反発、核合意に反してウラン濃縮活動を再開した。
禁輸措置やその適用除外撤廃、タンカーへの攻撃などは、いずれも原油価格を押し上げる要因となる。適用除外の撤廃を公表した翌日の4月23日、国際的な指標となるニューヨーク商業取引所(NYMEX)原油先物相場は、18年10月以来の1バレル66ドルを付け、年初来高値となった。ただその後は下落傾向となり、19年7月18日現在50ドル台後半で推移している。今のところ急騰と呼べるほどの上昇はなく、市場は冷静さを保っているように見える。
現在、原油価格の上値を抑えているのは大きく2つ、米国の生産量の多さと、中国の景気減速に伴う需要の減少だ。
最新のEIA(米エネルギー省エネルギー情報局)の報告書によると、シェールオイルの増産を背景にアメリカの原油生産量が18年にロシアを抜き、世界首位になった。アメリカの供給態勢が盤石だとの安心感から、原油価格は上値を追う展開になりづらい。
そしてもう1点の中国の景気減速である。アメリカとの貿易摩擦が長引いており、製造業の出荷減といった形で響いている。中国国家統計局が15日に発表した2019年4~6月の国内総生産(GDP)は前年同期比6.2%増となり、四半期ごとのデータを追える1992年以降で最低だった。中国の不振が世界経済にも影を落としている。
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