徴兵制:変わる韓国、復活するフランス、議論する日本──日本における徴兵制(1)
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月23日 11時45分
「経済的徴兵制」論と「血のコスト」論が含意する防衛政策のありかたは異なるだろう。だが徴兵制ないし兵制一般の問題を通して国民(市民)と政治の関係を捉えなおそうとしている点では共通している。
ところで、戦後ほとんど忘れ去られているが、この視点に立つ議論は、明治期の新聞・雑誌論説にしばしば見られるものである。たとえば、福澤諭吉、中江兆民、小野梓といった明治政治思想史上の重要人物は、それぞれの政治構想と結びついた独自の兵制論を用意していた。ただし同時代の政治思潮において、それほど兵制論がメジャーだったとはいえない。たとえば福澤にとっては、対外政策や経済政策のほうがはるかに重要かつ喫緊の問題であり、徴兵制などはどちらかというとマイナーなテーマであった。
だが、近代日本の政治思想において、政治と兵制をめぐる問題がどのように論じられてきたかをここで振り返ることは、今日の憲法改正をめぐる問題を考える上でも多少の利益があるように思われる。とりあえず、徴兵令制定時にさかのぼって議論をたどっていくことにしたい。
※第2回:明治時代の日本では9割近くが兵役を免れた――日本における徴兵制(2)
尾原宏之(Hiroyuki Ohara)
1973年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科単位取得退学。博士(政治学)。NHK、首都大学東京助教などを経て、現職。専門は日本政治思想史。著書に『大正大震災』『娯楽番組を創った男』(ともに白水社)、『軍事と公論』(慶應義塾大学出版会)など。
当記事は「アステイオン90」からの転載記事です。
『アステイオン90』
特集「国家の再定義――立憲制130年」
公益財団法人サントリー文化財団
アステイオン編集委員会 編
CCCメディアハウス
尾原宏之(甲南大学法学部准教授) ※アステイオン90より転載
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