デーブ・スペクター「吉本」「日本の芸能事務所」「テレビ局との癒着」を全て語る
ニューズウィーク日本版 / 2019年7月26日 17時55分
そもそも日本で「素人」というのは、悪い意味ではない。「新人」とか素人が大好きで、企業だっていまだに新卒を雇う。アメリカは経験がない人を好まない。キャスターになりたい人は必ずジャーナリズムスクールに行く。大学在学中にインターンをしたり、専門的な勉強をして職業訓練をしてから、就職する。
だが日本は漠然とした学歴しかなく、専門学校を出ている人のほうがすぐに役に立つくらいだ。メディアだけではなく商社など一般の企業でもいまだに新卒を雇って、入社してから社員教育をし、人事異動を繰り返して浅く広くいろいろなことを学んでいく。
日本社会がそうなっているので、芸能界はその延長線上にあるに過ぎない。だから違和感も抵抗もない。なぜアイドルとか下手な人たちに抵抗がないかというのは、日本社会にそういうベースがあるからだ。
日本の事務所は売れなくなったベテランには優しい
――吉本の岡本昭彦社長が使った「ファミリー」という言葉について、その定義はさておき、日本の芸能事務所というのは吉本もそうだし、例えばジャニーズ事務所も、EXILEの事務所であるLDHなども、養成所やダンススクールを持っていて素人の段階から育てるということをしている。手をかけて育て、デビューさせる。一方で海外にはタレントを育成する、育ててくれるという文化はなく、既に売れている人や売れそうな人にエージェントが付いて、売れなくなったらばっさり切り捨てる。
だからこそ、いい人が残って、才能がない人は淘汰されるのでクオリティーが高い。日本で言うと、ダンスを教える分にはいい。ジャニーズだって上手いしトップクラスだ。
ジャニーズが少しだけ違うと思うのは、小学生や中学生など本当に小さいときから少しずつ学んでいくなかで、最初はそんなに出番がない。板前さんみたいに時間をかけて修行して、踊れるとか歌えるようになってからグループに入れて売り出していくシステムなので、そういうところは評価してもいいと思う。
日本の事務所の「ファミリー」には、いいところもある。タレントはギャラの何分の一かしかもらえなくて、事務所による搾取と言えば搾取だし、最初のうちは損している。ところが、そのタレントが歳を取ってあまりニーズがなくなっても、事務所がその人たちを切ることはしない。
事務所もその人にお世話になって儲けさせてもらったから、例えば元アイドルが40代や60代になっても所属させたまま月給を払い続ける。つまり、恩返しとして一種の生活保護をしている。タレントにとっては失業保険になっている。
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