インバウンド消費拡大のカギを握るMICEとは
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月6日 11時10分
3──今後のMICEへの期待
2020年のオリンピック終了後には観光目的の訪日外国人数が頭打ちとなることが考えられる。今後も訪日外国人数の伸び率を維持するためには、ビジネス目的での訪日外国人の呼び込みが必要となることが想定される。したがって訪日外国人数の維持という観点からも、今後はより一層MICEの重要度が高まるだろう。
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2 観光庁HPより引用
3 杉本興運「シンガポールにおける観光とMICEの発展」(2017年)
4 Singapore Tourism Board「Annual Report on Tourism Statistics」(2015~2017年)
MICEの誘致強化に際し、地方部の役割が大きくなると考えられる。三大都市圏5で開催される国際会議や展示会は、地方部と比べ大型のものが多いという点が一つの特徴である。一方で、そのような大型イベントを開催できる施設は数に限りがある上、MICEのみならず他のイベントにも広く使用されており、既に稼働率が高い状態にある。そのため、今後MICEの開催件数を増やすためには、三大都市圏よりも地方部での開催に主眼を置くことが重要である。
実際に、2008年と2017年に日本で開催された国際会議について三大都市圏と地方部に分けて比較すると6、開催件数の伸び率(年平均)は三大都市圏が4.9%、地方部が5.8%であり、外国人参加者数の伸び率(年平均)は三大都市圏が5.3%、地方部が7.7%であった(図表4)。いずれも地方部の伸び率が三大都市圏よりも高くなっている。さらに、三大都市圏と地方部の伸び率の差をみると、外国人参加者の伸び率の差が開催件数の差よりも大きくなっており、地方部では国際会議への外国人の参加率が三大都市圏以上に上昇していることがわかる。
地方部へのさらなるMICE誘致に向けては、官民が一体となって密に協調する体制の強化が求められる。観光庁などの機関が資金面等の取り組みを強化するだけではなく、地元の協力やモチベーションアップが欠かせない。地元の再活性化を目指した商店街の協力を得て国際学会の開催に繋げた福岡市は、まさに官民一体となってMICE誘致に取り組んだ模範である7。このような成功モデルを例に挙げて、観光庁はMICE誘致のメリットを広く普及させ、地域の企業や個人等の民間を後押しすることが重要だ。
2019年のG20関係閣僚会合は、大阪サミットを除けば、8つのうち7つが地方部での開催である。閣僚会合の開催地について、政府は「地方創生の観点から声をあげた地区を中心に選定」(菅義偉官房長官)したとしている。地方開催には、日本の地方部の魅力を世界に発信するだけでなく、地方部の民間に対して今後のMICE誘致への契機につなげたい想いも含まれている。
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