中国、台湾への個人旅行を暫時停止──かまえる中国軍
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月2日 13時59分
7月8日、アメリカは戦車や地対空ミサイルなど総額22億ドル(約2400億円)の台湾への武器売却を約束した。
一方、たしかに蔡英文ら政権与党(民進党)側は「もし習近平が台湾に対して要求している一国二制度を容認すれば、香港のようなことになる。香港デモは他人ごとではない。香港デモは台湾の未来像、いや明日だ」として、香港デモの現実を認識せよと警戒感を強めている。
目の前で展開されている香港市民のデモとそれを強権的に鎮圧しようとする香港政府。政府の側には北京政府が、そして中国人民解放軍が構えていることは誰でもが知っている。台湾も明日はこうなるかもしれないという危機感は、ひまわり運動で立ち上がった若者たちを再び奮い立たせた。
その結果、15%まで落ち込んでいた蔡英文の支持率は、一挙に36%にまで上昇している。
北京政府にしてみれば、中国大陸内における人民の声が怖いと同時に、香港市民の声が怖い、そして台湾の若者たちの声が怖い。
今般の措置の主たる原因は後者(香港デモの影響)だろうと思いながら、それでも念のため、中国政府の元高官に「なぜか」を聞いてみた。
すると、即答で、次のような厳しい言葉が返ってきた。
──蔡英文は香港のデモを利用している。大陸との平和統一の実態は、こういう結果を招くのだとして、香港のデモを盛んに来年の総裁選の材料に使って大衆を煽っている。特に習近平が台湾に関して「一国二制度」を適用するスピーチをしたので、それを良いことに「一国二制度」が実施されたら、台湾でも同じことが起きると言い立てて、台湾独立分子を引き付けようとしている。そのようなことだけは絶対に許さないということを思い知らせなければならない。先月出たばかりの国防部白書を見るといい。
国防部のメッセージと「新時代の中国国防」白書
中華人民共和国国防部(中国の中央行政省庁の一つ国防部)は7月24日「新時代の中国国防」白書なるものを発布した。1998年以来発布されてきたが、このたびの白書は第10回目であり、また習近平政権になってからは最初の総合的な国防白書だ。
この国防白書に基づいて7月31日の国防部ウェブサイトには「祖国の完全統一を実現することは、絶対に阻止してはならない歴史的大勢である」という論評が掲載された。概ね、以下のような内容が書いてある。
●第十九回党大会は、「台湾問題を解決して祖国の完全統一を実現することは、中華民族すべての願望であり、根本的な利益である」と指摘している。先般発布した「新時代の中国国防」白書もまた、中国は必ず統一されなければならないと指摘している。中国は如何なる人によっても、いかなる政党によっても、いついかなる時でも、いかなる形式においても中国の領土を一寸たりとも分裂させることは絶対に許さない。
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