外食チェーンの海外進出、成功のカギは「8:2」の和魂洋才 くら寿司、全米展開の勝算
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月3日 11時37分
日本の勝ちパターンに工夫を施し、現地仕様にする。くら寿司の場合、その割合は8:2が絶妙だとの答えに辿り着いた。「お客さんは刺激を求める。おいしい、安いだけでなく、アミューズメント、楽しいレストランを求めている」と田中社長は強調する。
同様に、「一風堂」など国内外で約300店を手掛ける「力の源(もと)ホールディングス」も、海外初進出で2008年にニューヨークへ店を出す際、日本のスタイルを現地仕様に変えた。日本での成功体験に囚われず、「白紙の状態から考えた」(河原成美社長兼会長)そうで、店の入口付近にウェイティングバーを設置。日本にはない店構えのラーメン店はニューヨーカーの心を捉えた。今や一風堂などのラーメン店は街で人気のデートスポットにもなっている。
何がアメリカに進出する飲食店の成否の明暗を分けるか、答えは各社各様だろうが、現地事情に照らしてローカライズ(現地化)するのは有効のようだ。逆に、うまくいかなかったケースについては、「日本式のサービスや料理、マーケティング方法をそのまま米国で用い、現地の米国人向けの宣伝活動を行わずに失敗している」と、日本貿易振興機構(ジェトロ)は指摘する(ジェトロニューヨーク事務所「平成30年度 米国における日本食レストラン動向調査」より抜粋)。いきなり!ステーキも、日本で成功したスタイルをそのまま持ち込もうとしたのが、失敗の一因だったと言えそうだ。
同調査はまた、日本食レストランが4000超と全米一多いカリフォルニア州ではその経営者の多くは日本人や日系人以外のアジア系であることや、比較的日本食が浸透していなかったテキサス州やフロリダ州などの南部でアメリカ人経営の日本食レストランが目立ち始めたことなども、特徴的な日本食事情として挙げている。
国外の成長市場、各社が取り込み
海外を目指す動きはくら寿司に限ったことではない。
スシローを展開する「スシローグローバルホールディングス」は2019年9月期~21年9月期の中期計画で、5カ国以上への進出、年間売上高200億円を掲げる。現在、韓国と台湾に店を出しており、8月には香港とシンガポールにそれぞれ1号店をオープンする。「すしが非常に浸透しており、単一国での市場規模も大」と期待する北米へも20年9月期以降に進出を目指すほか、欧州での展開もにらむ。
そのスシローとの経営統合が白紙に戻った元気寿司は、海外出店の実績で先行している。現行の中期計画の目標では、国内の200店を上回る海外250店と掲げている。実際、海外店舗は既に約200店に上る。マレーシア、カンボジア、ミャンマー、クウェートなど、競合他社が未開拓のフロンティアへと、果敢に店舗網を広げている。アメリカでは、現地法人を通じてハワイを中心にワシントン、カリフォルニアの3州に店舗を持つ。なお、スシローとの経営統合撤回の理由の1つは「アジア地域での店舗展開方式の違いが明確となった」ことだとしており、現在の回転ずし業界において海外戦略がそれだけ重要な要素になっていることがうかがえる。
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