1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

韓国と日本で「慰安婦問題」への政府の対応が変化していった理由

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月8日 16時15分

ニック 日本政府は、公式にはこの問題は解決済みと言っていますが、非公式には保守政権が強制性を認めていないようです。

グラック教授 河野談話は強制性を認めていましたが、現在の安倍晋三政権は強制性を疑問視しています。一方で韓国政府は2011年から、慰安婦問題に大きく便乗してきました。日本の場合も韓国の場合も、その背景にあるのは国内政治です。戦後60周年の2005年には、ほとんどの政治家が慰安婦については発言していなかったのに、戦後70周年の2015年には慰安婦問題が支配的な論点になっていました。その理由を掘り下げていかなければなりませんね。

少し話を戻しましょう。オフィシャルな領域というのは自発的に動いているというよりは何かに「反応」しているものなのですが、何に反応しているのかが重要です。日本政府が強制性を否定するとき、それはどのような反応を生むと思いますか。



クリス 植民地化の記憶と結び付けて考えられると思います。強制性の否定と植民地化の否定......この二つは深いところで結び付いていて、慰安婦問題は単にジェンダーや国際政治の問題ではなくなっているのだと思います。それくらい、日本による植民地化は韓国政府と韓国のアイデンティティー、また韓国の歴史に大きな影響を与えたのだと......。

グラック教授 それは、韓国側の見方ですね。植民地化の文脈で考えるというのは、本当にそのとおりだと思います。では、日本側はどうでしょう。2015年12月に韓国と日本の外相同士が交わした慰安婦問題日韓合意は、「最終的で不可逆的」と言われていました。日本政府は補償などを約束しながら、韓国政府に何を期待していたか覚えている人はいますか。

ジヒョン 慰安婦像を撤去すること。

グラック教授 はい、韓国政府がソウルの日本大使館前にある慰安婦像の問題を「解決しようとすること」です。実際には、日韓間で慰安婦問題は今でも解決していないですね。日本大使館前での日本に対する抗議運動は1992年から毎週水曜日に行われ、2011年に1000回目を迎えたときに慰安婦像が建ちました。では、日本政府が慰安婦の強制性を否定したり、慰安婦像の撤去を求めると、何が起きると思いますか。

数人 もっと建てる!

グラック教授 ほかの場所に慰安婦像が建ちますね。日本政府が抗議するたびに、雨上がりのキノコのように世界のさまざまなところに慰安婦像が生えてくるようです。抗議すればするほど、相手方に燃料を与えることになるのです。ヨーロッパでのホロコーストの否定の場合でも同じようなことが起きました。ホロコーストを否定すればするほど、逆にそれは記憶に刻まれるのです。戦争の記憶というのはつくられ続けるので、政治的なプロセスの中でこのような相互作用が起きてしまいます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください