燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月8日 17時55分
一連の問題の背景には、第2次世界大戦中に日本企業が韓国人を強制的に動員して重労働に従事させたといういわゆる徴用工問題で、韓国に圧力をかけたい日本側の思惑がある。事の発端は2018年10月、韓国大法院(最高裁)が、日本企業に元徴用工への損害賠償支払いを命じたこと。日韓が1965年の国交正常化に際して日韓請求権協定を結び、韓国に5億ドルの経済支援を行ったことで、この問題は既に解決済み、というのが日本側の認識だった。
日本政府に近い筋によれば、安倍は徴用工問題に苛立ちを募らせており、韓国に譲歩を迫るための武器を探していた。そして、しばらく前から問題視されていた対韓輸出の問題に目をつけると、経済産業省の管轄だったこの問題を、大きな力を持つ首相官邸が引き継いだ。その結果は、芳しくない。
安倍の行動は、貿易を政治の武器に使うドナルド・トランプ米大統領のやり方と様々な意味で似ていると言われる。7月の一連の政府発表が、声明とその出し直しと戦略変更のミックスである点、まさにトランプ流だ。
こうした類の発表を行う際には、少なくとも自らの主張を裏づける証拠や、メディアや外交関係者への背景説明、それに最も重要なこととして、何が起こっているのかについての明確で一貫性のある説明が必要だ。一貫性を保つため、情報はすべて一つのオフィスを通して発表し、コメントは一人の代表者が行うべきだ。最後に、予想外の展開(その筆頭が日本製品の不買運動だろう)に備える緊急対応策も用意しておく必要がある。
だが今回の日本政府の対応はこの基本を押さえておらず、政府当局者たちは矛盾した声明や曖昧な発言を繰り返した。
徴用工判決の報復と認めた安倍
日本政府の基本的な主張は、きわめて実務的なものだ。日本側としては、どの輸出国にも認められている権利として、サプライヤに「今後は個別の出荷ごとに政府の承認が必要になる」と通告しているのだと説明ができる。既に(アメリカと並ぶ)最大の貿易相手国である中国に対しても同じシステムを導入しているが、明らかな悪影響はみられないことも説明できたはずだ。中国も、メモリーチップの生産が盛んな台湾も、日本のホワイト国リストには含まれていない。
かなりの反発を想定して、備えもしておくべきだった。サムスン電子の売上高は、韓国のGDPの約15%を占めている。主要事業に脅威が迫れば、どんな政府だって抵抗するはずだ。だが韓国政府の反応に直面して、日本政府は揺らいだ。世耕弘成経済産業相は、輸出管理は国の安全保障のためだと技術的な側面を強調しているが、政権幹部は彼が否定している徴用工訴訟への報復疑惑を裏付けるような発言をしている。
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