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燃え上がる日韓対立、安倍の「圧力外交」は初心者レベル

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月8日 17時55分

菅義偉内閣官房長官は、輸出管理は「国の安全保障上の理由」だとしながらも、韓国が「20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)までに、徴用工問題について満足する解決策を示さなかったことで、信頼関係が著しく損なわれた」という考えをちらつかせた。

政府が安全保障上の理由を前面に出し始めた直後に、安倍は再び歴史問題を持ち出した。元徴用工訴訟の最高裁判決への対応で「韓国は国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理において、守れないと思うのは当然ではないか」と報道番組で語ったのだ。

安倍と菅が、経済に及ぼすダメージの規模を予想していたかどうかは分からない。韓国で180以上の店舗を展開する日本のアパレル大手ユニクロは、韓国市民の不買運動の直撃を受け、デパートなどの売り場で売り上げが30%近く減少した。韓国では外国産ビールのなかで日本産ビールがダントツの人気を誇っていたが、スーパーやコンビニの棚から日本の銘柄が姿を消し、アサヒなど日本のビール大手は痛手を受けている。韓国の旅行会社によると、ここ数週間に日本を訪れる韓国人旅行者は半減したという。昨年日本を訪れた韓国人旅行者は750万人。今やインバウンド客は日本の景気底上げに大きく貢献しているが、なかでも韓国人客は最大のお得意さまだった。

「韓国は大げさに騒ぎすぎ」

日本は昨年、対韓輸出で200億ドル前後の黒字を計上した。これは対米輸出に次いで2番目に大きい貿易黒字だ。だが文大統領は8月2日にテレビで生中継された緊急国務会議で、「2度と日本に負けない」と宣言。日本と経済戦争に突入したとの認識を明確に示した。

一方で、日韓双方とも経済的な打撃は最小限で済むとの見方もある。韓国企業に引き続き購買意欲があればだが、日本政府の措置で輸入できなくなる物品はほとんどないと、米金融大手ゴールドマン・サックスは指摘する。また、貿易が活発なわりに、日本企業の韓国への直接投資は少なく、日本企業の中長期的なリスクは限定的だ。日本銀行の2018会計年度の統計によると、日本企業の韓国向け投資は、グローバルな対外投資の2.3%を占めるにすぎず、対米投資のおよそ10分の1にすぎない。

日本の財界は日韓の摩擦について沈黙しており、潜在的なコストにもかかわらず、安倍政権の取った措置を概ね支持しているようだ。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は、経済界は日韓関係の早期の「正常化」を望んでいると、述べている。ある財界人は個人的な見解として、日本が先に強硬姿勢を取ったわけではないと語った。「韓国は大げさに騒ぎ立て、世界経済に与える影響について不正確な発言をしている」

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