1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

月面にクマムシ持ち込みは問題ないのか? 「惑星検疫」の国際ルール

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月14日 15時30分

アポロ計画時に生まれた「惑星検疫」「惑星防護」のルール

地球から月面に最初に持ち込まれた生物といえば、ヒトが挙げられる。アポロ計画の宇宙飛行士たちは、地球から月面に赴いて活動した大型の生物だ。アポロ11号、12号、14号の宇宙飛行士は、帰還後に3週間隔離され、月から危険な微生物を持ち帰っていないかどうか徹底的に検査された。

宇宙飛行士からすればありがたくない措置だが、3回のミッション後検査により、月から有害な生物を持ち帰り地球を汚染する可能性は極めて低いと判断された。アポロ15号以降は、こうした措置は行われなくもよいことになった。

ただしこれは、地球以外の天体から生物を持ち帰ってしまうタイプの危険に対する措置であり、地球から他の天体への汚染を懸念しての措置ではない。当時、月の生物の可能性もまだ考えられていたが、アポロ探査機が持ち帰った月面サンプルによって可能性はほとんどないことがわかった。

アポロ計画などの有人宇宙探査、また無人探査機による惑星探査が現実のものとなる時期、地球への持ち込みと地球からの持ち出し、双方向の微生物汚染の問題をどのようにするか、という国際的な枠組みづくりが行われていた。1958年に国際組織COSPAR(宇宙空間科学研究委員会)が組織され、宇宙探査を行う際に「惑星検疫」または「惑星防護」といった防護措置を行うルールが明確化された。



火星の場合は厳格な汚染防止ルールが適用される

COSPARの惑星防護ルールでは、探査対象となる天体の種類と探査の方法によってカテゴリーが分けられている。カテゴリーIIの対象は「生命の起源と化学進化のプロセスに関連する重要な関心の対象であるものの、宇宙機による汚染が将来の探査を危うくする可能性はごく限られたものにとどまる」天体を指す。水の存在など、生命の進化に関係する物質の環境はあるものの、宇宙機(探査機や宇宙船)が有機物や微生物を持ち込んでも将来の探査の意義を損なうリスクは少ない、というものだ。

そして、月はこのカテゴリーIIに属する天体だ。持ち込み汚染について何も対策をしなくてよいわけではないが、着陸(衝突を含む)候補地点や飛行計画などについて記録を保持し、ミッション終了後の報告書を公開すればよい。「きちんと準備をすれば、クマムシを持ち込んでもよい」天体だといえる。ただし、実際にべレシートが衝突した地点を含むミッション終了後の報告が必要だ。NASAのLROによる画像はこの意味で非常に重要だといえる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください