月面にクマムシ持ち込みは問題ないのか? 「惑星検疫」の国際ルール
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月14日 15時30分
これが火星のように生命が存在する可能性を持つ天体の場合、カテゴリーIVという厳格な汚染防止ルールが適用される。NASAのバイキング探査機が確立した防護基準を元に、コンタミネーション除去を行わなくてはならない。
「惑星防護」は、宇宙探査の科学的意義を守るために必要
宇宙探査機にクマムシを搭載した例は、べレシートが初めてではない。ロシアの火星衛星探査機フォボス・グルントは、同様にクマムシを搭載していた。しかし、2011年の打ち上げ直後に軌道投入に失敗し、地球を脱出する前に海に沈んだ。
フォボス・グルントが目指していた火星の衛星フォボスは炭素を含む小惑星を起源にもつ可能性がある。炭素質の小惑星は月と同じカテゴリーIIに属するためCOSPARルールから考えればクマムシ搭載は可能ともいえる。ただし、探査失敗の非常事態を考えた場合はどうだろうか? 地球に落ちるのであればよいものの、軌道投入に失敗して衛星フォボスではなく火星に衝突した場合はどうだったのかという疑問も残る。
惑星防護の措置は、宇宙探査の科学的意義を守るために必要だ。ミッションの成否と同様に関心を寄せ、探査の成果を心から喜ぶことができるよう知っておくべきといえる。
Tardigrades: The Most Resilient Animals in the Universe
秋山文野
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