世界が知る「香港」は終わった
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月15日 16時30分
<アジアのビジネスハブ、国際金融センターとしての香港の存立基盤だったイギリス統治時代の法制度は、デモ隊と共に過去のものになったように見える>
香港国際空港を2日間にわたって閉鎖に追い込んだデモの後、中国政府はますますプロパガンダを強めている。
デモ隊と警官隊が警官隊が激しく衝突した翌日の8月14日には、デモ隊の空港への立ち入りを一時禁じる裁判所命令が出て、空港は2日ぶりに通常運航を再開した。ただし、本当に空港を閉鎖する必要があったのか、それとも当局が騒乱を大きく見せる狙いで閉鎖したのかはまだわからない。
空港でのデモが暴力に発展した8月13日の夜、デモ隊の一部は、デモ隊に紛れ込んだスパイと警官とみなした2人の男性を暴行した。そのうちの1人は、中国共産党系の新聞「環球時報」の記者と判明した。この暴行は、中国政府に恰好のプロパガンダ材料を与えた。暴行の様子を映した動画は、それまでデモの様子はほとんど見ることができなかった中国本土のサイトやソーシャルメディアで、ここぞとばかりに広く共有された。
<参考記事>中国記者暴行で虎の尾を踏んだ香港デモ
中国政府の公式発言もエスカレートし、デモ隊を「テロリスト」と呼びはじめた。中国共産党の機関紙「人民日報」は、デモ隊に対する「厳しい裁き」を求めた。フォーリン・ポリシー誌のジュード・ブランシェットも書いているように、大陸側が直接介入に踏み切る可能性は、これまでになく高くなっている。
<参考記事>香港デモの行方は天安門事件より不吉、ウイグル化が懸念され始めた
目には目を。8月11日、香港警察が至近距離から撃った「布袋弾」の散弾が、デモに参加していた若い医療関係者の顔に当たり、彼女は片目を失明するかもしれないほどの重傷を負った。以来、この事件と眼帯はデモ隊をひとつにまとめるシンボルとなった。デモ隊の一部が警官に対して積極的に暴力を振るうようになったのもこの時からだ。
アメリカの助けも逆効果
アメリカも口を出しはじめた。民主・共和両党の有力政治家たちは、香港のデモ隊を支持すると言っている。これはリスクの伴う行動だ。というのも、中国はかねてから、アメリカをデモの背後にいる「黒幕」と主張しているからだ。共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務が8月14日に香港の若者に向けて行ったような呼びかけ(「あなたがたが米国旗を振っているのが見える。あなたがたが米国家を歌っているのが聞こえる」)は、中国政府の被害妄想をさらに煽るだけだろう。
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