電気代に悩む時代が終わる? 卒FITで日本の電力事情はどう変わるか
ニューズウィーク日本版 / 2019年8月20日 16時10分
自社製品を条件に高額買取
48円で買い取られてきた1キロワット時の電気が、卒FIT後はいくらに値付けされるのか、利用者らの間で発表が待たれていた。2019年に入り、従来買い取ってきた電力大手が相次いで公表し、1キロワット時当たり7~9円の価格設定を示した。価格面を見れば、太陽光や風力を手掛けるスマートテック(本社:水戸市)が打ち出した、東京、東北両電力のエリアでの11.5円、中部、関西、中国、九州の4電力のエリアで10円という購入額が好条件に映る。
さらに高い価格を提示しているのは、パナソニックとNTT西日本子会社のNTTスマイルエナジー(大阪市)の連合。パナソニック製の蓄電池とNTTの太陽光発電監視システムなどを新たに導入すると、最大で1キロワット時当たり16円で買い取るという。丸紅もシャープ製蓄電池の購入を条件に最大14.6円で購入する。いずれも、自社の売り出し中の蓄電池と組み合わせることにより、高値で電気を買い取るとうたうメニューである。
こうした高額設定は7、8月、立て続けに発表された。11月を前に今後も新たなメニューで卒FIT対象の家庭を取り込もうとする動きが出てきそうだ。
発電コストは低下の一途
ただ、引き続き売電するにしても、1キロワット時48円に比べれば、10円台の買取額は見劣りし、インセンティブは湧きにくい。さらに、その価格での買取が保証される期間も「2年間」などと限定されており、変更はあり得る。買取額は発電コストとの見合いで、基本的に低下していく傾向にある。
そのため、つくった電気を売却するより、自宅用に回そうとする動きも一段と広がっていくと見込まれる。効率的な自家消費には、天候による発電量の多寡や生活パターンに応じた必要量の変化に合わせ、需給を調整できる蓄電池が重要な役割を果たす。
その意味で、上記のパナソニックやシャープのように、蓄電池を組み入れた販売戦略は顧客ニーズを捉え、理に適っているとも言える。2社のほか、東電系と組む京セラは自社製の蓄電池を、住宅側の初期費用ゼロで設置するサービスを4月に始めた。利用者は毎月定額料金をTEPCOホームテック(東京)に支払うが、10年間の契約満了後は、機器が無償譲渡される。
さらに、蓄電池とともに普及が期待できるのがEV(電気自動車)だ。EV自体を「動く蓄電池」と見立てて利用しようとする実証実験も横浜市など各地で進んでいる。
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