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注目ホラー『ミッドソマー』の監督が自作を語らない理由

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月16日 16時45分

民間伝承をテーマにしたホラー映画は、行き着く先が分かっている。この映画の楽しい部分は――そんなものが本当にあればだけど――物語としての驚きではなく、既に分かっている結末に向かうプロセスだ。

──あなたは自分の作品について、民間伝承や神話の「ごった煮」のようなものだと言っている。さまざまな要素を混ぜ合わせることで、その出どころを追うことにあまり意味がなくなるような形に変えるスタイルだ。神話自体を綿密に調べるより、こうした手法を好むのはなぜ?

大きな理由は、調査と創作のバランスを保ちたいということ。例えば『ヘレディタリー』に悪魔を登場させたくなかったのは、ほかの作品でやり尽くされているからだ。それに私はユダヤ人であってキリスト教徒ではないから、悪魔を恐れる理由もなかった。

物語をさらに力強いものにして、確固たる根拠を持たせるために何ができるか。私にとっては、それが重要なんだ。

──あなたが作品に取り入れた事柄が民間伝承に基づいていることを確認しようと、スウェーデンの文献を調べている人たちがいる。そんなふうに詮索されるのは嫌いなのでは?

面白いんじゃない? そうしたい人には、ちょうどいい材料を提供できていると思う。

たぶん私は、何も見逃すまいとスクリーンを見つめる人々に、それなりの材料を提供したいんだろう。受け身ではなく積極的に映画を見るように、ある意味、観客を「訓練」したい。

──あなたは『ミッドソマー』を、ゆがんだ男女の別れの映画にしたと言っていたが。

前に恋人と別れた後、その体験をテーマに映画を撮りたいと思ったができなかった。本当に落ち込んでいるときは、点を結んで線にして作品化するなんてできない。

それで次の別れが訪れたとき、この経験について1日くらい考えて何もアイデアが浮かばなければ映画にするのはやめようと決めた。そこで考えた結果、フォーク・ホラーというサブジャンルと個人的に経験した別れを組み合わせる方法にたどり着いた。4年前のことだ。



──この作品には、時に男性の振る舞いに対する強い怒りが感じられる気がするが。

『ミッドソマー』の脚本を書いていたとき、私は特に(主人公の女性)ダニに自分を重ねていた。だからダニの中には、たくさんの私がいる。

全ての登場人物の中に、私の一部がいるだろう。けれども、見る人が特にダニの視点を持つように仕向けていると思う。観客は完全にダニの味方になり、彼女の視点から物事を見る。そして物語が終わる頃には、全てがそんなに簡単に割り切れるものじゃないと感じてもらえればいいと思う。

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