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イスラエル政治の停滞と混迷は続く......やり直し選挙の行方

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月19日 11時30分

こうして4月の選挙ではネタニヤフによる首位は崩せなかったものの、組閣が実現しなかったことから、政権基盤はもはや盤石ではないとの希望を抱かせることになった。今回の選挙は対抗勢力の間で、ネタニヤフ長期政権を終わらせる好機と捉えられた。



アラブ政党の躍進、リーバーマンが握る鍵

リクードおよび「青と白」が主軸となったものの、今回と前回では選挙に参加した党派の布陣が若干変化している。ナフタリ・ベネット元教育相は、4月の選挙の直前に「ユダヤの家」から分裂し、新党「新しい右派」を結成した。だが少数勢力では議席を確保できなかったため、前回選挙から教訓を得て、アィエレト・シャケッドとともに右派連合「ヤミナ」を形成してこの度の選挙に臨んだ。その結果、今回は7議席を得ることに成功している(議席数は92%開票時点の速報値)。かつてはリクードとともに二大政党であった労働党は、近年は選挙で苦戦が続き、今回はゲシェルと連立を組んだが、やはり議席数を伸ばすことはできなかった。

そんな中で注目を集めたのは、イスラエルの人口の約2割を占めるアラブ系(パレスチナ系)の動向だ。ネタニヤフはアラブ系政党を露骨に敵視しており、以前の選挙ではアラブ系の票が伸びることを脅威のように論じたり、9月の選挙前には投票所にカメラを設置してすべての会話を記録させようと法案を提示したりしていた。

これに対し、アラブ系の政党側はなかなか結束できず、前回の選挙ではハダッシュ党とタアル党の連合が6議席、統一アラブ・リスト党とバラド党の連合が4議席で合計10議席を獲得していた。それが今回は4党すべてが連立して「アラブ統一リスト」を形成したことで、やや議席を伸ばして13議席を獲得することとなった。しいたげられてきたアラブ系政党が、リクードと「青と白」に次ぐ第三党となったことに対して、代表のアイマン・アウダは勝利宣言を出した。

だが結果的に、今回もキャスティング・ボートを握ることになったのは「イスラエル我が家」党のアヴィグドール・リーバーマンである。前回の選挙では、連立の条件として、超正統派ユダヤ教神学校生徒の徴兵免除を廃止する法案の成立を訴えるリーバーマンとネタニヤフの間で連立合意がまとまらず、解散に追い込むかたちとなった。今回の選挙では議席をさらに5から9に伸ばした「イスラエル我が家」は、与党が安定多数で形成される上でカギを握る存在となる。リクードも「青と白」も共に、前回の選挙から議席を減らしているため、多数派工作は組閣の上でますます重要となっている。

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