1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

イスラエル政治の停滞と混迷は続く......やり直し選挙の行方

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月19日 11時30分

大連立か少数与党か

そのリーバーマンが望んでいるのは、リクードと「青と白」、「イスラエル我が家」から成る大連立政権の発足だ。投票後の党本部前での演説で彼は、イスラエルのおかれた治安や経済の状態を緊急事態と評し、大連立が「唯一の選択肢」であると主張した。そこにはリクード主導の右派政権の中に吸収されての、少数派閥の地位にはもう甘んじない、との意思がうかがわれる。

だがそもそも今回の選挙が「ビビ降ろし」として展開したことを想起するなら、この連立の困難さは明らかである。「青と白」の側では、ようやく掴みかけた勝利を手放す理由はなく、リクードと連立を組むことには大きな抵抗があると思われる。また、首相の任期に制限を設ける法案や、対パレスチナで領土的な譲歩を示唆す「青と白」と、リクードとではそもそも政治方針が大きく異なる。選挙後の会見で「ヤミナ」は、「ガンツ主導の政府に加わる予定はない」と明言しており、大連立を組むならリクードは当初予定していた他の連立メンバーを失うことになると予想される。

とはいえリクードを中心に、ヤミナの他にシャス党や統一トーラー党など宗教政党を含めた連立だけでは過半数の61議席に達しない。今回の選挙結果では、「イスラエル我が家」以外に右派連立政権に参加しそうな正統は見当たらず、ネタニヤフ主導による右派連合の組閣に明るい展望を見いだすのは困難である。

それでは「青と白」を中心とした組閣となるのか。リヴリン大統領は現時点ではまだ誰に組閣を命じるのか明らかにしていない。「3度目の選挙は避ける」という強い意志を示しているだけに、大統領は、議席を獲得したすべての政党の党首との協議を経たうえで、可能性の高い人物に組閣を命じるだろうと報じられている。ネタニヤフが前回の組閣に失敗した点などを考え併せるなら、ガンツがその任に当たる可能性も高いと考えられる。しかし「青と白」も議席数はリクードとほぼ差はない。議席数を伸ばしたアラブ系政党に対して交渉の手を伸ばすものの、いまだ反応は冷ややかである。他に連立の相手を探そうにも、世俗婚やシャバットの日の公共交通機関の解禁などを掲げる「青と白」と、宗教派政党とのへだたりは大きい。

交渉の長期化を予想してか、ネタニヤフ首相は早々に、来週ニューヨークで開催される国連総会への欠席を表明した。議会内での勢力拮抗状態は変わらず、むしろ二大政党がそれぞれ基盤を弱める結果となった今回の選挙で、しばらくイスラエル政治の停滞と混迷は続きそうである。


錦田愛子(慶應義塾大学法学部政治学科准教授)


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください