1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

地球の気温上昇を2度未満に抑える人類の戦い

ニューズウィーク日本版 / 2019年9月20日 15時0分

45%削減が実現できない場合、特に貧しくて立場の弱い国々でおびただしいしい数の人が窮乏と死の危険にさらされる。そして地球温暖化の進行は止められない可能性が増す。IPCCによるとそれほど大幅な削減をするためには人類史上に前例のない速度と規模で世界中のエネルギー、農業、運輸、その他の産業部門を変貌させなければならない。

だから気候問題でアメリカと並ぶ超大国の中国も努力しなければならない。2015年のCOP21を前に中国が国内の石炭火力発電所を多数閉鎖したときは喝采を浴びた。だが最近また石炭燃焼が増大。しかも中国政府は外国での石炭火力発電所の新設に資金を提供している。アジアから中東、アフリカ、ヨーロッパへと連なる壮大な経済圏構想「一帯一路」を支える港湾設備や鉄道敷設などインフラ整備のためだ。



続くアマゾンの森林火災 LUCUS LANDAU-REUTERS

デアルバも中国がさらなる削減を約束したことは高く評価しながらクギを刺す。「(中国政府には)一帯一路の温暖化対策で一層の努力を求めている。あれだけの規模だから石炭でなく再生可能エネルギーを推進することが重要だ」

アマゾン川流域の森林火災、バハマ諸島に壊滅的な被害を与えたハリケーン「ドリアン」、北半球で多くの地域がこの夏に体験した熱波のほかにも、気象災害が数限りなく発生している。今や異常気象は過酷な現実として人々に襲い掛かる。

それでもデアルバは問題意識と運動の高まりに希望を見いだす。「10年前に比べれば一般の人たちの関わり方が大いに変化している」

アメリカでは気候変動対策を訴える「サンライズ運動」などが政治家に抗議し、政府には「グリーン・ニューディール政策」を要請している。アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員が後押しするこの構想は、1930年代の大恐慌から脱出するために当時のルーズベルト政権が雇用と投資を刺激したニューディール政策に範を取る。社会を変えるためには政府こそ旗振り役になるべきだという主張だ。

それは大掛かりな投資事業を意味するから大量の雇用が創出されて経済格差の縮小に役立つともいう。構想を支えるのは「気候正義」という視点だ。気候変動により最悪の被害を受けるのは貧しい非白人・地域社会だから、グリーン・ニューディールで彼らに優先的に仕事と機会を提供すべきだという。

活動家からの圧力のおかげでグリーン・ニューディールは米民主党の党是のようになってきた。民主党予備選の主要候補は全員が何らかの形でその支持に回っている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください