「きらきら弁当」も実は「男らしさ」だった......世界一男性性の強い国日本で「デキる男」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2023年8月31日 21時22分
さらに、板敷氏は「明治以降、日本の製造業の成長に男性的文化が役立った」。「製造業中心の国である一方で、住宅の断熱やサッシの性能の低さなど、生活の質は後回しになっていたのもこの男性性指数が高いことが原因だ」と分析する(※1)。男性性の高い文化では、「成功の物質的報酬」のほうが「生活の質の高さ」より優先されるからだ。
"よき母"を象徴する「きらきら弁当」も、「男性性」の特徴
「ものづくり」や「料理の盛り付け」に完璧さを求めるのが男性的文化の表現であるならば、幼稚園や小学校で求められる「きらきら弁当」は、どうなのだろう。
そもそも、「きらきら弁当」は子どもの興味をそそるような盛り付けがされているが、食事の一番の重要な要素である栄養価とは関係ない。子どもにもよるが、筆者の経験上、きらきら弁当は、期待したほど子どもには感謝はされず、それよりも自分のSNSに投稿して悦に浸っていたように思う。
米デューク大学で教鞭をとる文化人類学者のアン・アリソン教授は、凝ったお弁当を含む細々とした育児・家事を母親が一手に引き受けることで、日本社会は利益を得ていると1991年の文献「Japanese Mothers and Obentos: The Lunchbox as Ideological State Apparatus」で指摘している。
「きらきら弁当」や「手作り手提げバッグ」を始めとした細かく規定された持ち物の準備など、日本の育児や家事には多大な労働力が必要とされているから、母親はパートタイムを選んでしまう。その結果、日本の女性は安価な労働力の供給源になる。同時に、母親が育児と家事を引き受けるからこそ、父親が長時間労働に身を費やすことができ、企業にとっては都合がよい。日本という国は、母性労働から大きな利益を得ているのである。このアリソン教授の考察は1990年代のものだが、育児、家事、長時間労働をとりまく環境は現代でもあまり変わっていない。
ホフステードインサイツは"料理の盛り付けやものづくりに卓越性と完璧さを追求する"のも「男性性の高い文化」の特徴だと定義している(※3)。"よき母"を象徴する女性性の表現に見える「きらきら弁当」も、実は「男らしい社会」の表れなのかもしれない。
「デキる男」をググると出てくる男性像が衝撃だった
男性優位社会である日本で男性を責めるのは簡単だ。しかし、日本の男性もまた、"男らしくいる"プレッシャーに苦しんでいるのかもしれない。
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