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「巨象」インドのヒンドゥーな実像...3週間の滞在で見た「真の顔」

ニューズウィーク日本版 / 2023年9月19日 16時10分

だがナショナリズムは危険な不寛容を生む可能性もある。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、モディの首相就任以降、インド政府による人権侵害に対する抗議行動が増えているとし、反対意見を抑え込むために政府が暴力を使う例も増えたと指摘している。ただしBJPはそんな批判を意に介さない。

インド経済の活力を見せつける証拠は至る所にあった。高速道路や高層ビルの建設はあちこちで進められている。教育を受けたインド国民の大半は、今や「新興大国の市民」を自認している。

私は何度も、人口14億人強の同国で近年で「2億5000万人以上の」国民が極度の貧困を脱したと聞かされた。BJPの支持者に言わせれば、モディ政権の経済自由主義と産業政策のおかげだ。ただし世界銀行の報告には、極度の貧困は30年前に比べて33%減ったとある。そうであれば、BJPだけの手柄ではない。

G7はインドを加えてG8に

多くの国民は昔ながらの官僚主義が経済発展の足を引っ張っていると感じているが、それでも世界銀行の「ビジネス環境ランキング」を見ると、インドは15年の142位から63位まで順位を上げている。もはや貧困まみれで前近代的な国ではなく、急成長する世界の経済大国だという自負を、私はあちこちで感じた。

野党陣営には、国内メディアがBJPの圧力に屈し、単純で好戦的なナショナリズムをあおっているとの批判がある。時代遅れな思考方法も残っている。私自身、ロシアは「信頼に足る友人」だとか、アメリカは搾取的で60年以上にわたって宿敵パキスタンの味方をしてきたという主張を何度も聞かされた。

しかし、そうした声は独立を果たしたばかりで欧米嫌いの国民会議派が国を率いていた時代の「名残」にすぎない。私が会った現在のエリート層は、インドが世界の大国としての自信を深めつつあることを繰り返し強調していた。

今のインドは非同盟諸国で固めたグローバルサウスで指導力を発揮し、BRICSの一員として存在感を示すと同時に、アメリカ主導のクアッド(日米豪印戦略対話)やインド太平洋地域での合同軍事演習にも参加している。いずれも自国を強化し、アメリカや中国、ロシアと並ぶ独立した大国になりたいという願望の表れだろう。しかしインドが何よりも重視しているのは、中国に対抗できる勢力となることだ。

スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相がインドを、グローバルサウスを構成する「南西の大国」と位置付けつつも、西側諸国やその規範との「極めて強固な結び付き」を強調する理由はそこにある。

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