地球温暖化とどう向き合う? データと行動で希望を語る「エコリアリスト」に聞く
ニューズウィーク日本版 / 2023年9月22日 13時0分
「若者は失望してはならない」。ハンセンは電子メールで本誌にそう述べた。「彼らは難題を抱えているが、それは刺激的な挑戦であり、第2次大戦やベトナム戦争といった過去の多くの問題ほど危険ではない」
大洪水の爪痕(7月10日、ニューヨーク州ハイランドフォールズ) FATIH AKTASーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES
ジャーナリストのビル・マッキベンも同様だ。89年に刊行した『自然の終焉──環境破壊の現在と近未来』(邦訳・河出書房新社)は一般向けに危機を説いた先駆的著作だが、19年に発表した著書『揺らぎ』では、いつもながらの暗い見方に希望ムードが入り交じる。
「若かった頃と比べて、悲観的でなくなった点が1つある。こうした危機への抵抗は、少なくとも可能だという確信。それが本書の結論だ」と、マッキベンは記している。
何に希望を感じているのか。マッキベンは電話でこう説明した。
「講演の際には、いつも『状況を改善するために、私に何ができるか』と聞かれる。これは、現在の状況への心理的反応として非常に健全だ。いくつかの点で(気候変動は)ほかの緊急事態と変わらない。自宅が火事になったら、どうする? 火を消そうとするはずだ。行動こそが、絶望に対する最良の解毒剤だ」
NASAのJPLのデータ科学者で環境活動家のピーター・カルマスは昨年4月、化石燃料事業投資への抗議として、ロサンゼルスのJPモルガン・チェース社屋の入り口に自分を鎖でつなぎ、逮捕された。捨て身の行動に出た彼も、絶望は解答にはならないという。
「あまりに多くの人が気候変動に不安や絶望を感じ、どうしたらいいか分からずにいる。私たちはつながり合い、コミュニティーづくりを始めるべきだ。自分は独りではないと知ろう。友人と一緒に、変化を生み出せる何かに協力して取り組めば、ずっと乗り越えやすくなる」
台頭し始めたエコリアリズムの担い手のうち、最も意外な存在は「ブロズ・フォー・デカーボニゼーション(脱炭素化を求める野郎ども)」と名乗る団体だろう。マッチョ感あふれる名称のせいか、同団体のX(旧ツイッター)のプロフィールには「パロディーではない」とのただし書きまで付いている。
太陽光パネルなど、再生エネルギーの活用が急増(ドイツのリンゴ園) ANDREAS RENTZ/GETTY IMAGES
エコ不安から抜け出すには
ブロズは当初、真面目な組織と受け止めてもらえず苦労していた。だが今年4月、ニューヨーク・タイムズ紙に「気候変動と闘うには、旧来の環境保護の陰気さを捨て去り、新たなテクノロジーの可能性に焦点を合わせるのが一番だ」と考える団体と評されたことをきっかけに、そのメッセージに注目が集まっている。
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